2020 Fiscal Year Research-status Report
変分法による超新星爆発計算用核物質状態方程式のラムダハイペロン混合系への拡張
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18K13551
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
富樫 甫 東北大学, 理学研究科, 助教 (70733939)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一様核物質 / 状態方程式 / ハイペロン / 超新星爆発 / 中性子星 / 変分法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ラムダハイペロン粒子の混合を考慮した高温・高密度核物質の状態方程式を生のバリオン間相互作用に基づいて作成し、得られた状態方程式を中性子星や重力崩壊型超新星爆発などの高密度天体シミュレーションへと適用することで、それらのメカニズムにハイペロン混合が与える影響を明らかにすることである。さらに、本研究で構築する状態方程式の数値テーブルはweb上で公開し、世界中の研究者へ提供することを予定している。 2020年度の研究では、前年度に引き続き、高温低密度領域におけるアルファ粒子の混合を考慮したハイペロン物質の熱力学量の計算に取り組んだ。この際、アルファ粒子は有限体積を持つ古典的粒子として扱い、様々な密度・温度・陽子混在度におけるハイペロン物質の自由エネルギー密度をアルファ粒子とラムダ粒子の混在度について最小化することで、熱力学的に安定な解を求めた。前年度までの研究では、特定の温度や陽子混在度における熱力学量のみを計算してその妥当性を確認していたが、2020年度の研究では、数値計算プログラムの改良を行うことで、実際の天体シミュレーションで必要となる幅広い密度・温度・陽子混在度に対する様々な熱力学量を得ることが可能となった。 さらに2020年度は、現代的なバリオン間相互作用に含まれる結合チャンネル効果を直接的に考慮するために、全てのバリオンを準粒子描像で扱う新しいクラスター変分法の定式化にも取り組んだ。まずは研究の第一段階として、結合チャンネル相互作用を陽に含んだバリオン間相互作用から出発し、核子・ラムダ粒子・シグマ粒子で構成された絶対零度ハイペロン物質の状態方程式を求めた。得られた状態方程式を中性子星の構造計算に適用した結果、ハイペロンに関する結合相互作用は、中性子星の質量や半径には大きく影響しないが、内部の粒子組成には若干の変化を及ぼすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究により、高温低密度領域におけるバリオン物質状態方程式の数値計算プログラムを従来よりも高速化することに成功したが、それでも当初予定していた以上の計算時間を必要とするため、天体シミュレーションに適用できるだけの十分な熱力学量のテーブルを未だに完備することができていない。 さらに新型コロナウイルス感染症の影響により、リモートによる作業環境を構築するために時間を要したこともあり、本研究課題の進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、これまでに作成した数値計算プログラムを用いた大規模計算により、広範囲の密度・温度・陽子混在度におけるバリオン物質の熱力学量を完備した状態方程式テーブルの完成を目指す。そして、太陽質量の40倍程度の質量を持つ重い親星モデルから出発した重力崩壊シミュレーションを行い、高密度領域におけるハイペロン混合がブラックホール形成のメカニズムに与える影響を調べる。 上記の研究計画と並行して、結合チャンネル効果を考慮したクラスター変分法の研究にも取り組むことを予定している。2021年度の研究では、グザイ粒子まで考慮したバリオン八重項で構成された絶対零度高密度物質の状態方程式を構築し、結合チャンネル相互作用が中性子星内部の粒子組成に与える影響を系統的に調べることを予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた研究出張や国際会議への参加ができなくなったため、次年度使用額が生じた。2021年度は、リモートと対面による研究打ち合わせを組み合わせることで、効率的に共同研究者らと議論を進めるとともに、状態方程式テーブルを完成させるための数値計算プログラムの実行に適したPC・ワークステーションを導入することも順次検討する。
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Research Products
(4 results)