2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the contributions of the alpha-induced reactions in the explosive hydrogen-burning processes by direct and indirect measurements
Project/Area Number |
18K13556
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 勢也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (00747743)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原子核物理学実験 / 宇宙核物理学 / 不安定核ビーム / X線バースト / rp過程 / トロイの木馬法 / 冷却気体標的開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、x線バーストでの元素合成において重要な反応の1つである26Si(α,p)29P反応の断面積の直接測定と間接測定の2つの実験を計画していたが、2021年度には直接測定をまず完了させることができた。実験は、理化学研究所の加速器施設において東京大学原子核科学研究センターが運営する低エネルギー不安定核ビーム分離装置CRIBにて行った。 コロナ禍において海外から日本への入国が原則認められていない時期だったので、実験の共同提案者である韓国のSungyunkwan大学の研究グループは残念ながら来られなかった。急遽、国内で実験に協力してもらえる研究者を募って実験を運営するという、限られた時間的・人員的条件下での実験となった。現地に来られなかった実験参加者のために、ZoomやYouTube Liveなどによるオンライン・コミュニケーション・ツールを利用して、リアルタイムに情報を共有し、オンライン解析を分担したり、トラブル時に解決法を議論するなど、円滑に実験を進める上で有用であった。 この実験のために、事前に開発・性能評価をしていた、高冷却性能の二次ビーム生成標的を使用し、CRIBにおける過去最大強度の26Siビームを生成することができた。さらに、検出効率を高めるために、CRIBにおいては最多の検出器数を使用し、増大したデータ量を確実に処理するため、データ収集系も一新するなど、新しい技術を導入しつつ質・量ともに高い実験データを取得することができた。実験中のオンライン解析では、共鳴散乱由来のα粒子や、(α,p)反応由来の陽子が観測され、目的である原子核反応イベントの存在を確認した。実験後のより詳細なデータ解析は、韓国のグループらとも定期的にオンラインミーティングを開きつつ、着実に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍に突入した2020年以降、実験を行った理化学研究所の加速器施設の使用に制限がある時期があった。当実験は10.5日間という比較的長い期間加速器を専有して行うため、希望した時期にビームタイムが割り当てられないということも実際にあり、研究が当初の計画から遅れることとなった。また、新型コロナの流行状況によって海外から日本への入国が難しい時期もあり、一緒に実験の計画を練っていた韓国のSungyunkwan大学のグループが来られず、研究の進捗に影響があった。また、新しい気体標的の製造は、当初製造を相談していた企業が倒産するなど、思うように進まない面があったため、デザインや製造時期を変更するなど対応する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2021年度に取得した実験データの解析を進めることを、まず優先する。データ解析は、リモートで共同で実験を進めた韓国のグループと協力し、逐次情報を共有しつつ効率的に進めていく。2022年度前半中に、統計量などの大まかな見積もりを出すことを目標とする。 また、直接測定の実験データの解析結果を受け、第2の計画である間接測定をより詳細に検討する。具体的には、測定するエネルギー領域や運動学範囲の最適化や、統計量の見積もりの修正等などである。間接測定で採用するトロイの木馬法という手法では、より高い角度分解能や重イオンの粒子識別能力が求められるので、それらの技術的課題をクリアできるか、必要な物品を見極めつつ進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新たに開発した気体標的はデザインが変更・簡素化され、結果として製作費の削減につながった。また、2021年度は当初計画していた2つの実験のうち1つのみ実現できたので、残りの実験で予定していた分の未使用分が生じた。 次年度の主な使用計画としては、1つ目の実験データを管理するファイルサーバなどの導入を考えている。また、2つ目の実験において、高位置分解能のシリコン検出器が必要であり、購入を検討している。
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