2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代マイクロ波望遠鏡群で探るインフレーション起源重力波と宇宙の暗黒成分
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18K13558
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茅根 裕司 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 客員准科学研究員 (90649675)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 宇宙マイクロ波背景放射 / 観測的宇宙論 / 原始重力波 / ビッグデータ / 重力レンズ / インフレーション / 構造形成 / データ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代宇宙マイクロ波背景放射観測実験Simons Observatoryのscience forecast paperを出版した。この際、Simons Observatoryで我々が目指すべき科学目標を設定し、それに必要な感度・周波数・観測ストラテジ・観測天域を決定した。具体的には6mの大口径のlarge aperture望遠鏡と0.5mの小口径small aperture望遠鏡を建設、wide surveyとsmall surveyを実施することを決定した。観測周波数は、前景放射であるダストとシンクロトロンを除去するために、27, 39, 93, 145, 225, and 280 GHzの6周波数で実施することを決定した。これらの決定に基づき、現在は装置・解析パイプラインの開発を始めている。 このような選択になったのは、今までの地上CMB観測実験の経験を生かして、真に現実的な実験装置・観測・解析のモデル化を行い、science forecastを行ったからである。私は今までの地上実験、QUIET, ACT, POLARBEAR, ABS, BICEP/Keck実験などのデータをもとに、より現実的な1/fノイズのモデル化を行った。その上で、南米チリでインフレーション起源の大角度スケールBモードを観測(tensor-to-scalar ratio, r)するためには、半波長板(HWP)の使用が必須であり、その際現実的にどの大角度まで観測できるかを検証した。ニュートリノ総質量測定等を目指している小角度スケール観測でも同様に、過去の実験(ACT, POLARBEAR)による実績をもとに、ノイズのパフォーマンスを検証した。その結果、Simons Observatoryではsigma(r)=3e-3, ニュートリノ総質量は30 meVまで測定可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代宇宙マイクロ波背景放射実験Simons Observatoryのscience forecast、及び基礎設計・開発を進めた。偏光変調器、半波長板を使った大角度スケールの観測実現を目指すsmall aperture望遠鏡の基本ノイズパラメータを決定した。過去の実験の実績をもとに、small aperture望遠鏡で目標とする現実的な要求を決定した。前述のように、これらの成果を含む、Simons Observatory science forecast paperを出版した。 これまでに大角度スケールBモードの観測を目指したsmall aperture望遠鏡のデータ解析パイプラインを開発を進めてきた。なお私は現在、系統誤差の監督者としてパイプラインの設計、現実的な系統誤差の推定のインターフェースを務めている。また、Simons Observatoryのパイプラインの一つである「フィルター・ビンマップメイキング」パイプラインのデザインをPipeline working groupとともに進めた。ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)に併設されているNational Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)の研究者とともに、高性能計算機(High Performance computing)での使用を前提としたパイプラインフレームワークの開発を進めた。特に今後のシミュレーションスタディを実施するのに必要な実験パラメータの決定、大気パラメータの検証を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
出版したSimons Observatory Science Forecastを実現できるように、装置・データ解析パイプラインを開発していく。特に、小口径のsmall aperture望遠鏡による大角度スケール観測のデータ解析に使う予定の「フィルター・ビンマップメイキング」パイプラインの開発を更に進めていく。 ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)に併設されているNational Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)や、Simons ObservatoryのPipeline working groupの各メンバーと連携し、時系列解析、マップ解析、パワースペクトル解析、ヌルテスト、系統誤差評価、そして最終的な科学解析に渡るパイプラインの設計を進め、開発を行う。実験に即したシミュレーションデータを活用しながら、データの性質、サイズ、High performance computing (HPC)の活用を念頭に置きながら、開発を進める。この際、並行して進んでいる最新のCMB偏光観測実験Simons Arrayとの開発・解析環境の共通化をすすめる。Simons Arrayで観測されたデータも活用しながら、開発した解析パイプラインの性能・拡張性などを評価し、フィードバックをかけていく。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況、特に初年度で注力することになったSimons Observatory Science Forecast Paperの進捗に応じて、旅費・物品購入の調整を行なった。次年度は日米の出張を中心に、初年度に実施しなかったSimons Observatoryの建設が進められている南米チリ共和国への出張の可能性を考慮する。また、High Performance computing (HPC)パイプライン開発向けの(中型)計算機の購入を検討している。
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