2019 Fiscal Year Research-status Report
新光検出システム確立で目指す大型ニュートリノ・核子崩壊検出装置の高性能化
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18K13559
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西村 康宏 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40648119)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 検出器較正 / ニュートリノ / 光検出器 / 光源 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニュートリノ・核子崩壊物理を探る次世代の「ハイパーカミオカンデ」計画を、最良の性能と感度と共に実現するため、開発された新型光電子増倍管の本来の性能を、実際に用いる較正精度と共に明らかにする。 前年度にスーパーカミオカンデの検出器タンク内に取り付けた、130本程度の高性能光電子増倍管はハイパーカミオカンデのために開発し、初めて大規模な運用を始めた。 本年度は、取り付けて較正を終えてから1年以上観測を続け、光検出器性能の安定性を確認し、また短パルス光源のデフューザー部を試作した。高性能光電子増倍管の中には、僅かに不具合が見られたものもあったが、利得は想定より安定して十分な性能を得られた。また、ノイズであるダークカウントレートは、製造時の10kHzから前年度には6kHz前後に達していたが、更に長期的な低下を確認し、5kHz半ばまで下がった。安定化の半減期は3ヶ月と長く、低減具合のモニタを継続している。光子計数分解能・時間分解能は従来のスーパーカミオカンデ用光検出器に比べて半減して優れていることが分かり、光検出効率は倍となっていた。一方で、時間分解能は取り付け前に測定した値より1ナノ秒程度悪化していたことが分かった。これは時間計測回路とデフューザー光源を改良すれば改善できる可能性がある。 そこで、デフューザー光源の構成を検討するために、酸化マグネシウム粉末の濃度を4段階で調節し、板・球状に加工して、時間の広がりを抑えて拡散させられるかどうかを確認するためのサンプルを製作した。単パルスLED光源の動作を確認し、評価の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
異なる濃度の酸化マグネシウム粉末を混ぜた樹脂を数種の形状で試作し、波長帯と拡散度合いが異なるLEDを用意したが、どの組み合わせが最適化か結論できておらず、またパルス光を導入する光ファイバーの選定と設計が進んでいない。本年度に実験環境が変わり、新たに整備を必要とする測定機器の手配に時間がかかったため、評価開始まで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
パルス光分散の比較測定を進め、光ファイバー・LEDをどのように中心に据えるかを考え、最適な設計を決める。新型光電子増倍管で、パルス幅が十分小さい拡散光を得られるかを確認する。
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Causes of Carryover |
光源から光の拡散部までの導入部を製作できなかったため、未使用額が生じた。 超純水中で使用できる材質で光ファイバーと、その導入部のロッドを製作するために用いる。また、デフューザー部の最終形状を決めて、製作するための費用として使用する。
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