2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of emulsion telescope for precise gamma-ray observation
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18K13562
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
六條 宏紀 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (00725814)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ガンマ線 / 宇宙線 / 気球実験 / イメージング / 原子核乾板 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙磁場の影響を受けず空間を直進できるγ線を観測することで、「宇宙で起こる高エネルギーな物理現象」を探ることができる。 我々は、原子核乾板からなる大口径の望遠鏡を気球に搭載して上空へ打ち上げ、γ線による天体精密観測を目指すGRAINE計画を推進している。荷電粒子に対して優れた空間分解能を誇る原子核乾板でγ→e++e-反応を捉え、γ線の到来方向を0.1°~1°程度の精度(エネルギーに依存する)で決定出来る。これは現在観測中の衛星搭載望遠鏡に比べ、約1桁優れた撮像性能であり、原子核乾板望遠鏡によるかつてないγ線高分解能観測が実現できれば、高エネルギー宇宙の新たな姿が明らかになるだろう。 2018年4月26日、3度目の気球実験(GRAINE 2018)を豪州にて実施した。検出目標γ線天体「ほ座パルサー」を視野内に捉える気球飛翔、回収、現像を完遂し、予定していた観測に成功した。 実験に使用した原子核乾板に記録された飛跡は、名古屋大学で稼働する自動飛跡読取装置を用いてデジタルデータ化され、2018年末までに全ての乾板(総面積約40平米)のデータ取得を完了した。 コンバーター部(原子核乾板100枚の積層構造)は、γ線の角度、エネルギーの測定を担う。使用した乾板(38cm×25cm)1枚には、実験時に入射した様々な種類の荷電粒子が遺した飛跡が約1億本記録されている。この飛跡データから途中から始まって2本に分かれる幾何学的な特徴を持った事象を残す選別を行った結果、各乾板から約20000のγ線事象候補が選ばれた。 気球飛翔中に宇宙から飛来した陽子は、望遠鏡視野内の物体や乾板自体と反応して2次的なγ線を生成する。これらの現象を利用いて、上空でのγ線角度決定精度を調べたところ、100-300 MeVにおいて1度以下の性能を達成していることが確かめられた。天体観測においても優れたイメージング性能を発揮していることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年に実施した気球実験では観測時に姿勢モニター等で部分的な不具合が生じ、目標としいた天体初検出について未達成となってしまった。今回の2018年実験では、観測機器の不具合の原因を見直し、改良を施した上で実験に臨んだ。その結果、全フライト時間(約17時間)に渡って、全ての機器は正常に動作し、前回実験に見られたデータの不具合は発生しておらず、現在天体検出に向けて解析が進んでいる。特に本研究課題である高解像観測に関しては、100-300 MeVにおいて1度以下の性能を達成していることが確かめられており、天体観測においても優れたイメージング性能を発揮していることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
検出したガンマ線事象に対し、時間情報付与、姿勢決定のデータ解析が進行している。目標天体である「ほ座パルサー」領域について分析を進め、天体の検出有意度、空間的広がりについて結果を出していく。
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Causes of Carryover |
次年度早急に執行する。
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Research Products
(15 results)