2022 Fiscal Year Annual Research Report
Measurement of omni-directional momentum spectra of cosmic ray muons using a new type of nuclear emulsion films
Project/Area Number |
18K13564
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北川 暢子 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任助教 (20727911)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 飛跡検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度に試作したガラス乾板を積層したECCを用いた運動量測定手法は、ガラスを基板とした原子核乾板と暗箱と金属板さえあれば、暗室で検出器を作製可能で、電源を使用せず宇宙線の観測を行うことができる。また、ガラスを基板にすることで屋外で昼夜の温度差による伸縮や乾板の現像時の伸縮を最小限に抑える事ができるため、従来のプラスチックを基板とした原子核乾板よりもより高い位置分解能で宇宙線中の荷電粒子を記録することができる。 しかし、ガラス乾板の製作を進める上で、多数のガラス板の下処理(感光層である乳剤とガラスとの接着性を高める処理)方法の再検討を行い、実験の結果、放電量を増加させることで密着性の向上や塗布する乳剤の拡散が速やか(つまり、平面性がより高くなる傾向)であることが分かった。 また、従来の乳剤よりもより(硝酸銀の)粒子径が大きい(直径で約1.7倍)新たな乳剤を塗布した乾板を用いて、荷電粒子への感度の向上を図った。その結果、今回新たに実験した粒子径が大きい乾板方が従来品よりも感度が高い事を確認した。しかし、粒子が大きくなることにより、乾板読み取り時の位置分解能が悪化するため、これまでの現像温度を下げ、化学反応の進行スピードを減少させながらも十分な現像能力を保つパラメータを探索する必要があった。現時点では、いくつかのパラメータが候補となることが分かってきたが、最良の手法はまだ決定できておらず、今後の検討課題の一つである。
研究期間を総じて、当初は磁場をかけた環境で宇宙線を観測する検出器を想定していたが、原子核乾板の構成の再考によるガラス乾板の開発や、ガラス乾板を積層した検出器による解析手法の開発により、より簡便に検出器の作製や設置が行える新型の原子核乾板検出器の考案とその原理実証が出来たと考えている。
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