2019 Fiscal Year Annual Research Report
Measurement of the proton radius by a precision laser spectroscopy of muonic hydrogen atom
Project/Area Number |
18K13572
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
神田 聡太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (10800485)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミュオン / レーザー / ミュオン水素原子 / レーザー分光 / 陽子半径 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、ミュオン水素原子の基底状態における超微細構造を精密にレーザー分光して陽子のZemach半径を決定することを目指している。2019年度は最終年度であり、2018年度に行った中赤外光源の開発を進めるとともに、気体水素標的を用いたミュオンスピン回転実験を行った。ここで得られた主な成果は以下の3つである。 1) 初年度に開発した量子カスケードレーザーのスペクトル線幅を評価するための測定系を構築した。線幅はファブリ・ペロー干渉計を用いた方法と、回折格子を用いた方法とでそれぞれ測定し、独立な二つの手法で得た結果を比較することで測定に伴う系統的な不確かさを評価する。データ解析がまもなく完了する予定である。 2) 初年度に行ったミュオン重水素原子のスピン回転実験に用いた装置を改良し、ミュオン水素原子のスピン回転実験を英国理研RAL支所にて実施した。この実験は計画の最終段階であるレーザーを導入した分光実験の予備測定として位置付けられると同時に、ミュオン水素原子の連鎖脱励起および非弾性散乱の詳細な理解をもらたすものである。低圧の気体水素を標的チェンバーに封じ切った横磁場測定を5日間行い、基底状態における残留偏極と原子衝突による減偏極に関して示唆に富む結果を得た。シミュレーションを併用した詳細なデータ解析を進めており、結果は学術雑誌に投稿予定である。 3) 気体水素標的の代替としての固体水素標的の開発に着手し、熱シールドを含む真空容器を設計した。これは低温の金属膜に気体水素を吹き付けて厚さ1 mm程度の固体水素膜を形成する装置であり、固体水素膜の表面から真空中に放出されるミュオン水素原子を分光に用いることで原子衝突による減偏極が原理的に生じないという利点を持つ。これが実現すれば遷移光源の強度に対する要求を劇的に緩和することができ、実験の早期実現が可能となる。
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