2018 Fiscal Year Research-status Report
Relation between the large-scale structure of the universe and galaxy evolution revealed by the extremely wide-field imaging of Subaru
Project/Area Number |
18K13575
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
利川 潤 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員 (90760778)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原始銀河団 / 遠方宇宙 / 銀河進化 / 銀河団形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河は周囲の環境から強い影響を受けながら進化していることが知られており、銀河進化の理解には宇宙の構造形成の観点からの研究も不可欠である。また、遠方宇宙に遡ることで、銀河進化・宇宙の構造形成の現場を直接的に調べることも重要である。この目的を達成するためにHSCサーベイというすばる望遠鏡の戦略観測を用いた原始銀河団探査を行った。 HSCサーベイは継続中の観測計画であり、観測の進捗に合わせて最新のデータが公開される。その最新のデータを使い、原始銀河団探査をより広い視野、そしてより広い赤方偏移範囲へと拡大させた。特に今年度は遠方の原始銀河団候補を同定できるほど、質の高いデータを得ることができ、赤方偏移2から6に渡る原始銀河団候補のカタログを構築した。しかし、HSCサーベイによって提供されるデータだけでは赤方偏移方向の不定性が大きすぎるため、分光追観測を行うことによって原始銀河団候補の領域にいる銀河の赤方偏移を正確に決定する必要がある。そしてその赤方偏移分布を調べることで原始銀河団が存在することを確かめることができる。4つの原始銀河団候補に対して分光追観測を行ったところ、一般領域での研究から期待されるよりもライマン・アルファ輝線の検出率が低い傾向であることがわかった。これは原始銀河団のような高密度環境では、同時代の一般領域に存在する銀河よりも銀河形成・進化がより早く進んでいると解釈することもできる。しかし、まだ分光追観測が十分にできていないことが違いの原因である可能性を排除することはできず、さらに分光追観測が必要であることがわかった。この分光追観測に加えて、原始銀河団領域に存在する爆発的に星形成を行っている銀河を探査するため、サブミリ波による追観測の提案も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原始銀河団領域では一般領域から予想される検出率よりも低い可能性があることが分かり、原始銀河団の分光同定には当初の予想よりも多くの観測時間が必要であることが分かった。この理由により研究の進捗はやや遅れてしまった。しかし、この結果は遠方宇宙においても既に環境による銀河の性質の違いが現れていることを示唆しており、この結果が正しいかどうかをはっきりさせるためにさらに観測時間を費やす価値はある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは原始銀河団領域の観測例が少なかったために、一般領域での結果や不定性の大きい結果を基に観測計画を立てていた。しかし、本研究により原始銀河団の観測例が増えてきたため、これらの結果を加えることで追観測の計画を改良していく。これらの個々の原始銀河団に対する研究に加え、HSCサーベイの非常に大きなサンプルを用いることで、統計的な解析による研究も進めていく。
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Causes of Carryover |
予想よりも研究の進捗が遅れたため今年度は論文を出版することができなかった。また国際研究会の参加では招待講演または主催者からの旅費支給があったため、予想していた旅費の支出もなかった。 次年度は研究をより促進させるために海外の研究機関に所属する研究者と協力して観測提案を行っていく。取得されたデータの解析や議論のため長期の海外渡航も計画している。旅費や論文出版費、またデータ解析のための計算機の購入費に使用する計画である。
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