2018 Fiscal Year Research-status Report
無バイアス分子雲探査による銀河系渦状腕における星形成の理解
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18K13580
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西村 淳 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (50738565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 星形成 / 大質量星 / 分子雲 / 分子雲衝突 / 電波望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「銀河の中で星形成効率がどのように決まるのか」の解明を目的に次の手順で研究を実施する:(1)銀河系内の領域ごと(渦状腕、渦状腕間空間)に数kpc程度の範囲で分子ガスデータを無バイアスに取得、(2)各領域に含まれる個々の大質量星形成領域に対し星形成の状況の精査、(3)各領域の銀河構造的な特徴と星形成の特徴との比較、またそれら特徴の領域ごとの違いの検証。 これら各手順に対する本年度の研究実績は以下のようにまとめられる。 (1)2件の共同利用観測(国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡)に提案が採択され、ペルセウス腕ならびに局所スパーに対する分子ガスデータを収集した。これによりこれまで不足していた銀河系外縁部と渦状腕間空間に対するデータセットを新たに得た。 (2)すでに取得済みであった銀河系内縁部の分子ガスデータを詳細に解析することで、新たに2つの大質量星形成領域について、2つの独立した分子雲が衝突したことにより活発な大質量星形成が誘発されたことが明らかになった (Fujita, Nishimura et al. 2018, ApJ, 872, 49; Fujita, Nishimura et al. PASJ, 受理済み)。 (3)銀河系内縁部に位置するサジタリウス腕について、少なくとも 60% 程度の大質量星形成領域で分子雲衝突が大質量星形成を誘発した可能性があること、また、分子雲の衝突方向に1kpcスケールでの大局的な傾向が見られることから銀河運動との関連が示唆されることが分かった (西村他, 日本天文学会2018年秋季年会)。また、銀河系における星形成に直結すると見られる高密度ガスの全ガス量に対する割合は渦状腕で5%程度、渦状腕間空間で 0.4% 程度である事が分かった (Torii, Nishimura et al. PASJ, 受理済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で説明した各手順について個別に述べる。 (1)共同利用望遠鏡への観測提案が本年度までに全て採択され、また、観測条件にも恵まれた事から2年かけて取得を予定していたデータを本年度だけで全て取得できた。 (2)個別の大質量星形成領域に対する解析環境を python/jupyter で開発/整備した (n2-tools)。これにより効率的にデータ解析を進める事ができており、本年度中に出版できた2天体に加え、既に4天体の論文が投稿中、10天体程度が投稿準備中である。 (3)データの取得、個別天体の解析が当初の計画以上に順調に進んでいる事から、それらの結果を踏まえた、複数天体にまたがる大局的な傾向と銀河構造との比較を、前倒しして実施できている。実際に、サジタリウス腕においては銀河回転に起因すると思われる分子雲の流れが分子雲衝突を誘発し、さらには大質量星の形成に至る、その一連の様子が見え始めてきている。 以上のように、科学的成果、観測進捗、解析環境整備の全ての面で大きな進展をみせていることから当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、個別の大質量星形成領域に対する、ガス速度構造の精査を通した大質量星形成起因の調査を進める。まずは、FUGINデータやNANTEN2データなど、銀河系内縁部の天体を対象とする。さらに、本年度に取得できた銀河系外縁部データならびに渦状腕間空間に対する詳細解析も実施し、異なる銀河構造に属する大質量星形成領域における大質量星形成機構の差異について調査する。 個別天体の知見が蓄えられてきたところで、統計的研究も推進する。まずは、本年度に部分的に着手したサジタリウス腕について、天体数を増やす事で、渦状腕での普遍的な大質量星形成の描像の確立を目指す。さらに、銀河中心距離の異なる渦状腕や、渦状腕間空間での統計的研究も行い、それぞれ銀河構造の違いが星形成活動に及ぼす影響を調査する。これにより、銀河内での普遍的な大質量星形成機構を解き明かすことを目指す。
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Causes of Carryover |
予算は当初予定通り消化したが、一部の消耗品(ポータブルHDD, USBメモリ)に、同性能でより安価なものが発売されており、そのため差額が生じた。 翌年度にはこの余剰金を加える事で、当初予定よりさらに増加が見込まれる野辺山45m鏡によるCOスペクトルデータの保存用大容量ディスクの購入に充てたい。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Massive star formation in W51 A triggered by cloud?cloud collisions2019
Author(s)
Fujita Shinji、Torii Kazufumi、Kuno Nario、Nishimura Atsushi、Umemoto Tomofumi、Minamidani Tetsuhiro、Kohno Mikito、Yamagishi Mitsuyoshi、Tosaki Tomoka、Matsuo Mitsuhiro、Tsuda Yuya、Enokiya Rei、Tachihara Kengo、Ohama Akio、Sano Hidetoshi、Okawa Kazuki、Hayashi Katsuhiro、Yoshiike Satoshi、et al.
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Sagittarius arm における大質量星形成2018
Author(s)
西村淳, 大河一貴, 堤大陸, 河野樹人, 藤田真司, 吉池智史, 大浜晶生, 立原研悟, 福井康雄 (名古屋大 学), 南谷哲宏, 鳥居和史 (国立天文台), 大西利和 (大阪府立大学), 久野成夫 (筑波大学)
Organizer
日本天文学会2018年秋季年会
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[Presentation] Cloud collision triggering high-mass star formation in the Sagittarius arm2018
Author(s)
Atsushi Nishimura (Nagoya U), S. Fujita1, M. Kohno1, A. Ohama1, K. Torii2, S. Yoshiike1, D. Tsutsumi1, K. Okawa1, T. Minamidani2, K. Tachihara1, Y. Fukui1 and NANTEN2/FUGIN members (1: Nagoya U, 2: NRO/NAOJ)
Organizer
Workshop: Star Formation Triggered by Cloud-Cloud Collision
Int'l Joint Research
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[Presentation] Cloud collision triggering high-mass star formation in the Sagittarius arm2018
Author(s)
Atsushi Nishimura (Nagoya U), S. Fujita1, M. Kohno1, A. Ohama1, K. Torii2, S. Yoshiike1, D. Tsutsumi1, K. Okawa1, T. Minamidani2, K. Tachihara1, Y. Fukui1 and NANTEN2/FUGIN members (1: Nagoya U, 2: NRO/NAOJ)
Organizer
Shells, clouds and star clusters in galaxies
Int'l Joint Research
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[Presentation] FOREST Unbiased Galactic plane Imaging survey with the Nobeyama 45 m telescope (FUGIN): Filament properties and star formation in M172018
Author(s)
Atsushi Nishimura (Nagoya University), Tetsuhiro Minamidani, Tomofumi Umemoto, Shinji Fujita, Mitsuhiro Matsuo, Yusuke Hattori, Mikito Kohno, Mitsuyoshi Yamagishi, Yuya Tsuda, Mika Kuriki, Nario Kuno, Kazufumi Torii, Daichi Tsutsumi, Kazuki Okawa, Hidetoshi Sano, Kengo Tachihara, Akio Ohama, and Yasuo Fukui
Organizer
Interstellar filament paradigm: On their formation, evolution, and role in star formation
Int'l Joint Research
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