2018 Fiscal Year Research-status Report
分子雲コア精密観測による乱流起源の超低質星/褐色矮星形成メカニズムの調査
Project/Area Number |
18K13582
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
徳田 一起 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60802139)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 分子雲コア / 褐色矮星形成 / 小質量星形成 / ALMA / 電波望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
超低質量星や褐色矮星の形成機構に関しては 1 太陽質量程度の星の形成機構に比べて大きく取り遅れている。その理由としては、母体となる非常に高密度で低質量なガス塊の形成要 因が理解されていないことが挙げられる。本研究では、ALMA (Atacama Large Millimeter/sub-millimeter Array)を用いることにより、超低質量星の母体となる高密度分子雲コアの観測し、その形成メカニズムに迫るものである。太陽系近傍にある 分子雲コアを ALMAを用いて観測するとこにより、超低質量で高密度なガス塊がどの程度の割合で埋もれているかを調査し、さらに同望遠鏡を用いて複数分子輝線での高い空間分解能での観測を実施し、密度/温度の精密な空間/速度分布を測定することにより、高密度コア形成に周囲の環境 (乱流) がどのような役割を果たしたかを明らかにする。 現在(2019年3月末)までに、申請者を筆頭著者とする論文が1本受理された(Tokuda et al. 2018)。本論文では、ALMAを用いてMC27という分子雲コアを観測した結果、その内部に通常の分子雲コアでは予想されないような高い温度(~60K)を持つ分子ガス成分の発見を報告した。そのすぐ近傍には非常に低質量(~10^-3 太陽質量程度)で高密度(水素分子個数密度~10^7 cm^-3)のガス塊が存在するとことから、分子雲コア内部での乱流による衝撃波が高温構造と高密度構造を生成したと解釈している。またALMAを用いた別の観測により、分子雲コア自体の質量が典型的なものと比べて非常に小さく(0.2-0.4 太陽質量程度)、かつ高密度な天体を見出し、褐色矮星の初期条件を表す天体として注目している(投稿論文が受理されたが、2019年4月のため、業績には記載しない)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間1年目にあたる本年度(2018年度)では、投稿論文が1本採択された。これは分子雲コア内部の乱流運動が超低質量の高密度天体の形成に影響を与えている可能性を提示した初めて観測的に示した論文と考えている。また本論文では、本来分子雲コアの研究では見逃されることの多かったCO分子輝線が乱流による高温構造をトレースするために非常に重要なプローブであることを示すことができた(成果1)。また、ALMAを用いた別の観測によりフィラメント状分子雲に埋もれた低質量/高密度分子雲コアを見出した。これは当初の研究計画では想定していなかったものであるが、褐色矮星/超低質量星がより大きい星を作る分子雲コアと同様に形成されるモードの存在を示唆する重要な天体を見出したと言える(成果2)。この他、ALMAでのターゲット選定と分子雲コア進化のタイムスケール導出など統計的研究を主眼においたサーベイ観測を野辺山45m鏡を用いて行った。現在解析を進めている段階であるが、分子雲コアそれぞれにおいて、進化の指標の1つである重水素濃縮度が異なるなど、多様性を見出しつつある(成果3)。 全体的に順調に論文化/観測の実行が進みつるあるが、ALMA Cycle 6 (2018年4月)に提出した観測提案が受理されなかったため、成果2で得られた天体のより高い空間分解能による観測に2019年度中に着手することは不可能となった。したがって、進捗状況を(2)と評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
ALMA Cycle 6で採択されなかった観測提案の反省点を踏まえて、次のCycle 7では研究代表者として関連研究の観測提案を3件(+および共同研究者として1件)行う(2019年4月時点ですでに提出済み)。これらが採択されれば、遅くとも研究最終年度となる2020年度中には解析に着手できる見込みである。 本年度は去年度を中心に観測を実行したおうし座領域の分子雲コアのサーベイ観測の解析を中心に行う予定である。用いるデータは、ALMA Cycle 6で観測が採択/実行されたものと、野辺山45m鏡で取得したものである。前者のデータは主に、分子雲コアの内部に成長した高密度でコンパクトな構造が存在するか否かを明らかにし、後者では分子雲コア進化の指標の1つである重水素濃縮度を明らかにする。重水素濃縮度はコアの時間進化に応じて増加する傾向にあり、どのような段階で分子雲コアの内部に星形成の種となる構造が形成されうるかを調べることができる見込みである。本研究は褐色矮星/超低質量星のみならず、小質量星形成の一般的な理解にも役立つ。 また、必要に応じて国内外の単一大型望遠鏡を用いた観測提案を行う。すでにASTE望遠鏡を用いた観測が2018年度に採択されており、2019年度に実施予定である。(成果1)で得られた結果を踏まえて、COの高励起線を用いて分子雲の比較的広範囲を観測し、高温構造を同定を試みる。これにより乱流衝撃波によって高密度構造が形成されうる可能性についてより一般的な理解、およびALMAでの高空間分解能観測に接続するための目標領域選定を目指す。
|
-
-
-
[Journal Article] FOREST Unbiased Galactic Plane Imaging Survey with the Nobeyama 45-m Telescope (FUGIN) V: Dense gas mass fraction of molecular gas in the Galactic plane2019
Author(s)
Torii, Kazufumi; Fujita, Shinji; Nishimura, Atsushi; Tokuda, Kazuki; Kohno, Mikito; Tachihara, Kengo; Inutsuka, Shu-ichiro; Matsuo, Mitsuhiro; Kuriki, Mika; Tsuda, Yuya; Minamidani, Tetsuhiro; Umemoto, Tomofumi; Kuno, Nario; Miyamoto, Yusuke
-
Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
-
-
[Presentation] L1495 領域のフィラメント雲に埋もれた褐色矮星前駆体候補の高密度コア2019
Author(s)
徳田一起, Zahorecz Sarolta, 立原研悟, 宮本洋輔, 福井康雄, 犬塚修一郎, Andre Phillipe, 西合一矢, 河村晶子, 立松健一, 松本倫明, 町田正博, 富田賢吾, 谷口琴美, 神鳥亮, 高嶋辰幸, 大西利和
Organizer
日本天文学会2019年春季年会
-
-
-
[Presentation] 星形成初期段階分子雲コアの乱流ショックにより生じた暖かいCOガス2018
Author(s)
徳田一起 (大阪府大/国立天文台チリ観測所), 大西利和 (大阪府大), 西合一矢, 河村晶子 (国立天文台チリ観測所), 井上剛志, 犬塚修一郎, 福井康雄, 立原研悟 (名古屋大), 松本倫明 (法政大), 町田正博 (九州大), 細川隆史 (京都大), 富田賢吾 (大阪大)
Organizer
日本天文学会2018年秋季年会
-
-
-
-
-
-
-
-