2018 Fiscal Year Research-status Report
過飽和気相中の前駆体物質に着目した,シリケイトダスト生成機構の再考
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18K13598
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
石塚 紳之介 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, JSPS特別研究員 (20817788)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 均質核生成 / 宇宙ダスト / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリケイトダストは,Mg,Fe,Si,Oから成る四成分系であり,生成メカニズムの解明には多成分系の核生成過程を明らかにする必要がある.気相中で前駆体となる分子クラスターや,核生成過程における中間相のナノ粒子は,生成物とは異なる化学組成を取りうる.本年度はSi-O,およびAl-O二成分系の核生成過程を,さまざまな酸素分圧条件で赤外分光スペクトル “その場” 測定し,生成物は透過型電子顕微鏡を用いて調べた.その結果,酸素に不足した過飽和蒸気中からは,20-200 nmの金属 (Al, Si) の “頭” と最長1 μmほどの酸化物 (SiO2, Al2O3) の “尾” から成る特異な形状のナノ粒子が生成することが明らかになった.一方,酸素が十分に供給されるような条件では50-100 nmの球形のナノ粒子が生成する.赤外スペクトルから核生成直後の粒子は結晶構造をもたないことが示唆され,酸素の不足した条件では非結晶相からの相分離を経て,特異な異方性をもつナノ結晶が生成したと考えられる.(AlO)n (n≦16) クラスターの量子化学計算を行ったところ,Alが農集した構造が現れた.この結果は,核生成直後に相分離が起こりうることを示している.酸素に乏しい過飽和蒸気中では,酸素に富む分子クラスターが核として働き,核生成後にAlを取り込みながら化学組成が変化し,相分離が起こる.VLS成長を経て,特異な異方性をもったナノ粒子が生じたと考えられる.本研究は,核生成過程に現れるナノ粒子の液相的な振る舞いが最終的なナノ粒子のサイズ,形,結晶構造を左右することを示唆している.特に系の化学量論比がバルク結晶と一致しない場合には決定的な影響があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にはなかった量子科学計算を行うことができた.臨界核サイズ付近の分子クラスター構造や予測される赤外スペクトルを実験と比較するとことで,期待以上の知見が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
2成分系で得られた知見をもとに,Mg-Si-Oの三成分系,Feを加えた4成分系での均質核生成過程の実験を行う.
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