2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13607
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
寺居 剛 国立天文台, ハワイ観測所, RCUH職員 (20624018)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 太陽系外縁天体 / サイズ分布 / サーベイ観測 / すばる望遠鏡 / Hyper Suprime-Cam / トロヤ群 / ヒルダ群 / ケンタウルス族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は海王星軌道の外側に分布する太陽系外縁天体およびそれらと関係性の高い小天体集団に対して観測データに基づく統計的調査を実施することにより、太陽系外縁部における微惑星の形成・進化過程に関する理解を深め、太陽系初期に起こったと考えられている巨大惑星移動に伴う小天体の大規模軌道進化の解明に迫ることを目的とする。 2016年から継続的に実施している、すばる望遠鏡の超広視野撮像装置 Hyper Suprime-Cam(HSC)による太陽系外縁部サーベイの提案がS18B期共同利用観測公募にて採択され、2018年11月および12月に観測を実施した。また、取得データの解析を効率的かつ高精度に行うための解析ソフトウエアツールを作成した。解析が完了しているのは全データの一部ではあるものの、得られた外縁天体のサイズ頻度分布は最新の先行研究と同等の精度であることを確認した。本結果を天文学会2018年秋季年会にて報告した。 さらに、海王星ラグランジュ点に位置し、外縁天体と共通の起源を持つと考えられる海王星トロヤ群天体のサーベイ観測を HSC で行うための共同利用観測提案も採択され、同年11月・12月に観測を行った。 また、外惑星領域で形成されたことが有力視されているヒルダ群天体(日心距離 3.8 天文単位付近に群集する小天体集団)を観測した HSC データを解析した結果、そのサイズ頻度分布のべき指数は木星トロヤ群天体のそれと一致することが明らかになった。これは両者が類似の起源を持つことを示唆しており、一方で火星-木星軌道間に位置する小惑星帯とは明らかにサイズ分布形状が異なることから、それらは木星軌道以遠の領域で形成された後に現在の場所に運搬されたとする理論モデルを強く支持している。本結果をまとめた論文は 2018 年 7 月に Astronomical Journal 誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測データの取得および解析は順調に進んでおり、結果が出揃いつつある。一部の成果はすでに論文出版や学会発表がなされている。
|
Strategy for Future Research Activity |
すばる望遠鏡 HSC を用いた広域サーベイ観測によって取得されたデータの解析を進め、検出される多数の外縁天体からこれまでにない大規模な統計サンプルの作成を実現する。これにより非常に高い精度でサイズ頻度分布を決定することが可能になる。それを用いて力学的な特徴(軌道傾斜角など)や色指数(カラー)とサイズ頻度分布の関連性を詳細に調査し、外縁天体の力学進化および化学進化の痕跡を探る。 また、特定の領域を観測した多数の画像を重ね合わせ、極めて暗い外縁天体を検出するための技術開発を進め、衝突進化の効果が卓越することによって生じるサイズ頻度分布形状の遷移を検出することを目指す。
|
Research Products
(11 results)