2019 Fiscal Year Research-status Report
連成シミュレーションによるスーパーアース形成過程と大気量進化の解明
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18K13608
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
荻原 正博 国立天文台, 科学研究部, 特任助教 (90781980)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | N体計算 / スーパーアース / 大気進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、惑星集積N体計算及び原始惑星系円盤進化計算をスーパーアースの大気量進化計算と連成してシミュレーションを実行することで、現実的なスーパーアース形成モデルを構築し、従来の形成モデルに内在する諸問題の解決に挑む。特に、これまで見過ごされてきた磁場駆動円盤風によって進化する原始惑星系円盤中でのスーパーアースの形成過程や大気獲得の具体的な描像を明らかにすることや、微惑星降着によって成長する際にスーパーアースが獲得する大気量の具体的な進化を明らかにすることを目的としている。 昨年度は、原始惑星系円盤中の動径方向の円盤風駆動降着流が、スーパーアースが獲得する大気量へ及ぼす影響を主に調べた。本年度は、スーパーアースの成長と大気量進化を同時に追うシミュレーションを本格的に実行し、以下の3つの物理過程がスーパーアースの大気量に及ぼす影響を評価した。まず、ペブル集積の結果として大気が加熱されることで、スーパーアースが獲得する大気量が抑制される効果をみた。その結果、ペブル集積による大気加熱は惑星形成後期段階では有効ではないことが明らかになった。次に、惑星同士の衝突時に大気が散逸する効果に着目した。シミュレーションの結果、惑星同士の衝突時にある程度の大気が散逸することがわかったが、一方でスーパーアースが大量の大気を獲得した後には衝突イベントの数が少ないため、衝突による大気散逸の効果は限定的であるということが明らかになった。最後に、惑星形成後に長時間かけて大気が宇宙空間へ流出する効果も調べた。その結果、一部のスーパーアースにおいては長時間の大気流出が重要であるが、多くのスーパーアースはその効果に影響されないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、スーパーアース形成と大気量進化を連成したシミュレーションを数100ラン実行することができ、これにより「研究実績の概要」に記したようないくつかの新たな知見を得た。また、本研究成果について雑誌論文としてまとめ出版することもできており、おおむね順調に研究計画が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、原始惑星系円盤進化に光蒸発の効果を取り入れる計画である。本年度までに実行したシミュレーションでは、磁気駆動円盤風の効果を導入した円盤進化を用いており、従来の円盤進化モデルよりも格段に現実的な円盤進化モデルとなっている。ところで、円盤進化の最終段階では中心星からのX線および紫外線の照射によって円盤ガスが散逸する効果(光蒸発)が重要になることが指摘されている。この段階での円盤の状態は、スーパーアースが獲得する大気量にも大きく影響すると考えられることから、今後はまず光蒸発の影響を考慮した円盤進化をシミュレーションに導入する。これを用いて、スーパーアースの形成と大気量進化への影響を明らかにする計画である。
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Causes of Carryover |
本年度の後半に、シミュレーション結果のデータ保存を目的としてストレージ機器の購入を予定していた。実際には、シミュレーション結果を一時的に国立天文台・天文シミュレーションプロジェクト保有のサーバに保存した。これにより、データ解析をより効率的に行える。今後は、データ解析がほぼ終了した段階でストレージ機器を購入し、データを移行する計画である。これは次年度の早い段階で行う予定であり、またその他の研究計画には影響を及ぼさなさい事柄であることから、全体的な計画には変更が無い。
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Research Products
(6 results)