2020 Fiscal Year Research-status Report
地球大気の日周期変動が気象・気候システムに果たす役割の解明
Project/Area Number |
18K13612
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂崎 貴俊 京都大学, 理学研究科, 助教 (70723039)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大気自由振動 / スペクトル / 地上気圧 / 大気再解析 / 熱帯降水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大気の短周期~中・長周期変動にわたる幅広い周期帯の大気変動に対して日周期変動が果たす役割とその物理プロセスを明らかにすることを目的として研究を始めた。まずは数値シミュレーションの結果の解析により、短周期変動に与える影響を調べた。ところが研究を進める過程で、そもそも大気の短周期変動の実態について学術的にも良く分かっていない、ということが判明しこの点について詳しく調べることにした。 最新の高時間分解能グローバル大気データ(ERA-5大気再解析)の解析により、短周期成分に『グローバル大気自由振動』のシグナルが非常に強く表れていることが分かった。自由振動研究はおよそ二世紀にわたる長い歴史があり、その存在は理論的に予測されてきた一方で、現実大気中の共鳴振動の検出は、これまでごく一部の低周波なものに限られていた。本研究は、大気中の共鳴振動を広い周波数領域にわたって多数検出することに初めて成功したものである。本研究成果は国際ジャーナル論文として公開し(Sakazaki and Hamilton, 2020, Journal of the Atmospheric Sciences)、海外の複数のメディアに取り上げられた。 さらにこれら自由振動は、微弱ながらも熱帯のグローバルスケールの地上降水変動を励起していることも明らかにした。これまで自由振動はむしろ降水変動によって引き起こされていると考えられてきたが、本成果はその理解に疑問符を投げかけるものでもある。この成果も国際ジャーナル論文(Sakazaki, 2021, Journal of the Atmospheric Sciences)として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述したように、大気の短周期変動を調べるうちに、これまで誰も気づいてこなかった現象(自由振動)に邂逅し、新しい研究を開拓しつつある。当初の計画とは異なる方向性ではあるが、想定外の進展があった点で上記のように自己評価させていただいた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果について国内外の学会で発表する。また、自由振動の成因について詳しく調べる。当初の研究計画でも想定していたように、これら短周期の自由振動は非線形相互作用を通じて、日周期エネルギーの影響を受けている可能性もある。これらの点について、複数の観測データ・モデルのデータ解析を用いて調べる予定である。 また、当初の計画に沿って熱帯降水日周期の年々変動についても解析を進めており、結果をまとめて公表する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響で各種学会が中止・オンライン開催となったため、当初見込んでいた旅費に余剰が発生した。次年度は、打ち合わせ旅費およびデータ解析のためのHDD購入、サーバ増強などに使用させて頂く予定である。
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Research Products
(8 results)