2019 Fiscal Year Research-status Report
Long-term decrease in the M2 tide on the west coast of the Kyushu Island and its relation to changes in the tidal amplification of the Bohai, Yellow and East China Seas
Project/Area Number |
18K13613
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堤 英輔 東京大学, 大気海洋研究所, 特任助教 (70635846)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | M2潮位振幅 / 東シナ海ー黄海ー渤海 / 内部潮汐 / 黒潮流路変動 / 成層場変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
九州西岸において、過去数十年にわたり主太陰半日周潮(M2)の潮位振幅が減少している。本研究はこの原因を、東シナ海―黄海―渤海(EYBS)にわたる縁辺海スケールの潮汐共鳴特性の変化と九州西岸のローカルな潮汐特性の変化間の関連に注目し明らかにする。2019年度はYBCSを含む西部北太平洋を対象とする3次元数値海洋モデルを用い、地形・成層・外力の条件を変化させた一連の数値実験を行い、当該海域のM2潮位振幅の変動要因を調べた。 成層が潮位変動に与える影響を調べるために、北西太平洋海洋長期再解析データセットFORA-WNPの水温・塩分の気候値を与えた計算(成層run)を行い、その結果を空間的に一様とした計算(非成層run)結果と比較した。成層runでは非成層runに比べてEYBSにおいて約10%のM2潮位振幅の減少が見られたが、これは成層runでは東シナ海陸棚斜面と琉球弧陸棚斜面で顕著な内部潮汐が発生し、EYBSに入射する順圧潮汐エネルギーの一部が傾圧潮汐エネルギーとして北太平洋側へと放出されたためであることが分かった。 次に黒潮を主とする地衡流場を与えた計算を行った(黒潮run)。この結果、主に黒潮の流路変動に伴った成層場の変動によって、内部潮汐の発生・伝搬経路が変化し、特に九州の南西部周辺に±3%程度のM2潮位振幅の変動を生じ得ることが分かった。 この他に諫早湾の地形変化や海上風の場の変化の影響を調べたがいずれもEYBSのM2潮位振幅に与える影響は1%未満と軽微であり、成層場の変動が内部潮汐を通じてEYBSの潮位振幅の変動に影響している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M2潮位振幅の成層場に対する感度が当初の予想よりも大きく、数値実験設定に変更作業を要し、潮汐エネルギーの散逸の影響は十分に検討できなかったものの、2019年度は数値モデル実験による東シナ海-黄海-渤海におけるM2潮位振幅の変動要因の究明を概ね当初の予定通り実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに得られたM2潮位変動の要因を考慮し、過去のM2潮位振幅変動の再現計算を実施する。この際、数値モデルの開境界(西部北太平洋域)において外力として入力するM2潮位振幅の変動が重要となるが、外洋域潮位観測結果を基に対処する。また、数値モデルに入力する成層構造の再現性が潮汐の再現性の要因となるため、各再解析データおよび海洋観測データの相互比較によってモデルに与えるデータの精度を吟味する。また、2019年度の実験では十分に考慮していなかった中国・韓国沿岸の地形変化の影響を文献調査を基にした数値実験によって検討するとともに、潮汐エネルギー散逸の影響をいくつかの領域において高解像度数値モデル実験との比較により明らかにする。 以上の実験の解析結果から過去に九州西岸域において観測されたM2潮位変動に対する各要因の影響を定量化し、研究の総括を行う。
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Research Products
(3 results)