2018 Fiscal Year Research-status Report
ストリップ型シリコン検出器と超伝導磁石を用いたミュオンラジオグラフィーの新展開
Project/Area Number |
18K13619
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
音野 瑛俊 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 助教 (20648034)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミュオンラジオグラフィー / ストリップ型シリコン検出器 / 超電導磁石 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙線ミュオンを用いて火山などの構造物の内部構造を透視するミュオンラジオグラフィーが著しく発展している。ミュオンラジオグラフィーのための検出器技術として原子核乾板、シンチレーション検出器、ガス検出器が開発されてきた。本プログラムではストリップ型シリコン検出器と超電導磁石をミューンラジオグラフィーに初めて導入することを目的とする。ストリップ型シリコン検出器はシンチレーション検出器やガス検出器よりも1桁以上高い位置分解能を持ち、原子核乾板にはないリアルタイム測定を可能とする。その一方で高価であるために検討が進められてこなかった。申請者はスイスのジュネーブ郊外にある欧州原子核研究機構(CERN)においてATLAS実験に取り組み、特にSCTと呼ばれるストリップ型シリコン検出器の運転に取り組んできた。このSCTは60m2の面積を持ち、約10%に相当する6m2 をスペアモジュールとして保存してきたが、これらを交換に使用しないことを2017年に決定した。そのため、このSCTのスペアモジュールの一部をミュオンラジオグラフィーに応用することを着想した。
ストリップ型シリコン検出器の汎用性に着目し、同じくSCTのスペアモジュールが使用できる未知粒子の探索を目的としたFASER実験との共同開発を開始した。特にGeneve大学と協力してストリップ型シリコン検出器の支持構造及び冷却系の設計、読み出しエレクトロニクスの開発を進めている。そして精華大学と協力してモニタリング及びインターロックシステムを開発している。私は、ストリップ型シリコン検出器の電源及びインターフェースの開発を担当している。また、SCTのスペアモジュールの性能を評価するシステムを立ち上げ、既に約1m2について健全に動作していることを確認した。これは小規模な対象物に対するミュオンラジオグラフィーとして十分な面積である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FASER実験の共同研究者らとの議論の過程で、ストリップ型シリコン検出器の開発要素について個別に仕様書を執筆し、SCTのモジュール開発者らをはじめとする専門家からからレビューを受ける過程を経ることを決めた。SCTは約15年前に製作されたため、当時の開発者らはまだ研究活動を続けており、ATLAS実験以外に応用する際の検討について協力を得ることができた。極めて有益なアドバイスが得られ、検出器設計に反映させている。FASER実験は0.6テスラのソレノイド磁石の設計を進めており、当初使用を予定していた高エネルギー加器研究機構(KEK)が保有する0.9テスラのソレノイド型超伝導磁石の代替として使用が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
ストリップ型シリコン検出器のプロジェクトリーダーとして、FASER実験の共同研究者らと支持構造、冷却系、読み出しエレクトロニクス、モニタリングインターロックシステムの開発を推進しており、平成31年度以降も継続する。現在、個別の開発要素についての仕様書がほぼ完成し、発注に移行できる段階にある。それぞれのプロトタイプは7月頃に納品する予定である。基礎性能及び長期安定性のテストを平成31年度秋までに終了させ、その過程で発見した修正項目を反映させた実機を平成31年度冬に作成する。FASER実験のソレノイド磁石も平成31年度冬の完成を見込めるため、ストリップ型シリコン検出器との統合運転を行い宇宙線ミュオンの運動量測定に取り組む。
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