2019 Fiscal Year Research-status Report
大気ラドンは地震をとらえているのか?:大気と地中の同時測定による検証
Project/Area Number |
18K13620
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
大森 康孝 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (70637602)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ラドン / フラックス / 土壌 / 水分 / 大気 / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元(平成31)年度は、前年度に構築した土中ラドン濃度およびラドン・フラックスの測定システムに加えて、大気ラドン濃度測定器および環境パラメータ(土壌温度、土壌水分、気温、大気圧)測定器を野外の観測サイトに設置し、モニタリングを開始した。そして、ラドン変動の要因となる環境パラメータを同定した。 土中ラドン濃度は、深さ80 cmにおいて15-23 kBq/m3、40 cmにおいて5-15 kBq/m3、20 cmにおいて5-12 kBq/m3であった。気温や土壌温度の変化に対応する日変動や大気圧変化による変動は認められなかった一方、降雨に伴う土壌水分の変化に起因する数日から半月スケールの変動が認められた。特に、深さ80 cmにおけるラドン濃度は同深度よりも地表の土壌水分の変化によく応答したことから、ラドン散逸能の変化よりも、土壌の空隙が水で満たされてラドンの地表への移動が抑制されたことが要因であると考えられた。 大気ラドン濃度は2-30 Bq/m3が測定された。気温の変化に対応する日変動が認められ、深夜から早朝に高く日中に低い傾向であった。これは、大気の熱混合の発達と消失に由来する。この日変動の大きさは、降雨による影響を受ける傾向があった。また、大気ラドン濃度変動と大気圧変動の明らかな関係性は見いだせなかった。 ラドン・フラックスは5-15 mBq/m2/sが測定された。気温や土壌温度の変化に対応する日変動が認められ、深夜から早朝に高く日中に低い傾向であった。また、降雨に伴うラドン・フラックスの短期的な上昇(20-270 mBq/m2/s)が認められた。これは、地表から放出されるラドンを捕集する容器の設置面が降雨の影響を受けず、そこからラドンが選択的に散逸するという測定方法に起因する現象であると考えられた。ラドン・フラックス変動と大気圧変動の明らかな関係性は見いだせなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した通り、ラドン(大気ラドン、土中ラドン、およびラドン・フラックス)と環境パラメータ(土壌温度、土壌水分、気温、および大気圧)の測定システムを野外の観測サイトに設置し、データを継続的に測定、取得することができた。さらに、大気ラドン、土中ラドン、およびラドン・フラックスに影響を与える環境パラメータの因子を同定することができた。これらのことから、本研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、ラドンと環境パラメータのモニタリングを継続するとともに、観測により得られたデータに基づき土中ラドン、ラドン・フラックス、および大気ラドンの相互の関係性について検討する。また、地震の発生や潮汐歪の変動とラドン変動の関連性について、周期解析などを用いて調べる。
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Research Products
(3 results)