2021 Fiscal Year Research-status Report
沈み込み帯前弧域における短波長不均質構造モデルの構築と水輸送過程の解明
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18K13626
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
椎名 高裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (70796151)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高周波後続波 / 沈み込み帯 / スラブ内地震 / 地震波散乱 / 地震波減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北地方で観測されたS波の高周波後続波の伝播過程を,数値シミュレーションにより検討した.対象となる高周波後続波は,昨年度までによく観測される地震の震源位置やおおよその伝播経路が特定された波群である.数値シミュレーションにはモンテカルロ法を用いた. 高周波後続波の観測には,マントルウェッジにおける前弧と背弧の地震波減衰コントラストが大きく影響すると考えられている.2次元断面上かつ大局的な不均質構造(島弧地殻やマントルウェッジ,沈み込む太平洋スラブ)のみを考慮した試行ではあるものの,直達波の到着時刻周辺での高周波振幅の減少やある程度の時間経過後の振幅の増加など,高周波後続波が観測された波形記録の特徴に整合する結果が得られた.すなわち,散乱体の分布に加えて,地下の減衰構造が高周波後続波の観測に密接に関係しているという推測がサポートされた.ただし,観測された高周波後続波の特徴を議論するためには,現状の数値シミュレーションでは不十分である.3次元の波動伝播を組み込みやより現実的な不均質構造を仮定することが,今後,高周波後続波の特徴を再現する地震波減衰や散乱構造をより詳しく検討する上での課題である. 北海道地方周辺で観測された高周波後続波の観測状況を精査した.これにより,東北地方とは異なり,北海道地方では火山フロントに沿って高周波帯域の波形特徴が変化することを確かめた.また,東北日本および北海道地方周辺における高周波後続波のより多くの観測事例を収集するため,機械学習技術を活用した探索を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地震波速度や減衰,散乱の3次元的な不均質構造に対して,地震波のエンベロープを合成可能なモンテカルロシミュレーション手法を構築した.ただし,時間および物理的な計算コストを考慮し,本年度は2次元断面上かつ比較的単純なモデルに対する高周波後続波の伝播シミュレーションを実施した.直達波周辺での振幅の減少やある程度の時間経過後に振幅が増加など,高周波後続波が観測された波形の特徴の一部を再現することに成功した.定性的であるものの,この結果はマントルウェッジの背弧部における強い減衰領域の存在や沈み込み帯前弧域における散乱体の分布が高周波後続波の観測に関係していることを支持する.一方で,具体的な地震波減衰・散乱構造を用いたシミュレーションやその3次元的な分布の影響についての検討が今後の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
より現実的な構造モデルを与えた数値シミュレーションを実施し,観測波形の特徴とのより詳しい比較を行う.また,機会学習技術を活用し,高周波後続波の再発掘を行い,観測事例を増やすことを試みる.東北地方および北海道地方で高周波後続波の詳細な観測分布とシミュレーションの知見を合わせ,沈み込み帯における短波長不均質構造のモデル構築を推進する.
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により予定していた複数の研究打ち合わせや学会への参加が延期となる状況が続いている.このため,次年度への繰り越しが生じた. 当該年度までの未使用分は,延期した研究打ち合わせや成果発表に関わる費用として使用する予定である.
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