2018 Fiscal Year Research-status Report
放射光X線高圧下その場観測と局所微量分析による鉄-ケイ酸塩間の水素分配の決定
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18K13635
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
桑原 秀治 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特別研究員 (50505394)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水素 / マントル / 核 / 分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では高圧実験により金属鉄-ケイ酸塩液相間の水素分配係数を決定し、地球型惑星形成期における惑星内部の水素分布に制約を加えることを目的としている。本年度はマルチアンビル型高圧発生装置を用いて圧力8GPa、温度1700-1800℃における金属鉄-ケイ酸塩液相間の水素分配実験を行った。試料には純鉄および中央海嶺玄武岩の混合粉末にMg(OH)2をH2O量が全体の2質量%になるよう添加したものを使用した。急冷減圧後の回収試料は研磨した後、インジウムに埋め、走査型電子顕微鏡による組織観察、電子線プローブマイクロアナライザによる主成分分析、二次イオン質量分析装置によるケイ酸塩相の水素の定量を行った。二次イオン質量分析には均質な回収試料組織が必要なため、いくつかのカプセル材(単結晶MgO、SiO2、窒化ホウ素)と実験試料組成(エンスタタイトコンドライト、玄武岩)を用意し、均質なケイ酸塩急冷ガラスが得られる条件を模索し、玄武岩試料と窒化ホウ素カプセルの組み合わせで均質な急冷ケイ酸塩ガラスが得られることがわかった。また、分析時に問題となる水素の外部汚染を排除するための分析前処理手順も確立し、ケイ酸塩相の水素量を決定することに成功した。一方で、鉄中の水素量の見積もりに当初検討していた放射光X線を用いた高圧下その場観測実験では水素を飽和に近い量まで加えないと格子体積から水素量の見積もりを行うことが難しいことと、X線を透過および液相での水素封入を両立させるカプセル材が見つからないこともあってかなり難航している。まだ予備的な結果ではあるが回収試料中のケイ酸塩相からは約1.5質量%のH2Oが検出され、少なくとも行った実験条件においてはかなりの量の水素がケイ酸塩相に分配されうることが示唆された。この結果は最近の先行研究[Clesi et al., 2018]とも調和的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで水素を飽和させた系での金属鉄-ケイ酸塩固相または液相間の水素分配実験では鉄中の水素量のみが見積もられ、地球形成期において大量の水素が核に溶け込むことが長らく信じられてきた。一方で本年度行った実験では先行研究が行ってこなかった水素が未飽和な系でのケイ酸塩相の水素量を定量したところ、出発試料に含めた水素のうち半分程度はケイ酸塩相に分配されることが示唆された。こうした結果は多くの先行研究の描像とは異なるものであり、今後さらに研究の進展が予想されるため概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
放射光X線を用いた高圧下その場観測では水素を飽和に近い量まで加えないと鉄の格子体積から水素量を見積もるのは難しいことがわかったため、今後はより急冷実験を行い、ケイ酸塩相に分配される水素量が圧力、温度、組成にどのような依存性をもつのかより詳細に調べていくことを検討している。
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Causes of Carryover |
研究計画の遂行に必要な物品等のみを購入した結果、それだけでは有効な活用が難しい、少額の残金が生じた。その残金を次年度使用額と合算し、有効に活用する。
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Research Products
(3 results)