2018 Fiscal Year Research-status Report
高温マグマプロセス解明に向けたジルコンPCMR年代測定法の開発
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18K13636
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
坂田 周平 学習院大学, 理学部, 助教 (20772255)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジルコン / 部分溶融 / ウラン系列 / トリウム系列 / 非平衡年代測定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は本研究課題で開発を目指すジルコンPCMR年代測定法について分析技術面での評価を行った。まずレーザーアブレーションタンデム四重極型ICP質量分析法と年代既知標準ジルコンを用いて230Th測定における質量スペクトル干渉の除去を試みた。問題となる干渉は相対的に高強度となる232Thイオンからのテーリングと主成分元素由来のジルコニウム酸化物イオンであるが、四重極質量分離部を2回通過することで232Thテーリングの影響はほぼ完全に除去(10の-12乗以下の影響)できることがわかった。またジルコニウム酸化物イオンの干渉についても2つの質量分離部の中間地点にヘリウムガスを少量流すことで完全に除去することに成功した。この手法を用いて208Pb/232Th、206Pb/238Uの測定精度・確度の評価を行ったところ、確度については1%程度と十分な結果が得られた。一方で、精度に関しては10%以上の誤差が避けられず、これはレーザーアブレーションサンプリング法の感度をボトルネックとする計数統計的な誤差が主因であると結論づけた。そのため、天然試料の分析では計数誤差を低減するために鉱物のバルク分解による湿式測定法の開発が必要となる。今年度は、湿式分析に必要となる標準溶液作成のための前準備としてU-TEVA樹脂を用いたイオンクロマトグラフィーによる元素分離予備実験を行った。この結果、十分な回収率と元素分離能を達成できることが判明した。研究2年目となる2019年度は同位体スパイクを用いて市販の標準溶液の同位体・元素比価付けを行うとともにジルコンのバルク分解法を立ち上げ、天然試料の分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では2018年度中に試料の分析手法を確立する予定であったが、質量分析における干渉の問題を解決するために予想以上に時間を必要としてしまった。これは既存の手法による干渉除去とは全く異なるアプローチを模索したためである。しかし、時間はかかったものの干渉の除去はほぼ完全に達成でき、従来法よりも正確な質量分析を行う態勢は確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者は2019年度より東京大学地震研究所に異動したが、前所属組織である学習院大学の設備は継続して使用可能であるため計画に大きな変更は必要ない。2019年度は前年度の反省点を踏まえて湿式分析法の立ち上げと並行して天然試料の収集や前処理も進めていく。また、鉱物のバルク分解法については東京工業大学の横山哲也教授の研究室へ見学に伺い、ノウハウの習得を進めていく。天然試料の収集に関しては、株式会社京都フィッション・トラック社の檀原徹氏に協力して頂き北海道洞爺火山灰試料についても入手予定である。
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