2020 Fiscal Year Research-status Report
高温マグマプロセス解明に向けたジルコンPCMR年代測定法の開発
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18K13636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂田 周平 東京大学, 地震研究所, 助教 (20772255)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジルコン / 部分溶融 / ウラン系列 / トリウム系列 / 微量元素組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では地下深部での部分溶融で発生したマグマからジルコン鉱物が結晶化するまでの時間を測定するための新たな年代測定法の開発を目指す。2020年度は、2019年度に開発を行ったレーザーアブレーションICPMS法による第四紀ジルコンの局所U-Th-Pb同位体分析法を用いて、三瓶火山試料のいくつかのテフラ由来ジルコン試料(三瓶大田、三瓶池田、三瓶木次)の分析を試験的に行った。これらの試料は質量数208のPb濃度が極めて低いため、Th-Pb法による精度の良い年代決定が困難であったが、230Thと231Paの非平衡効果を補正したU-Pb年代法を用いることで精確な年代を決定することが可能となった。その結果、約4~10万年前の期間において火山地下でジルコン結晶が連続的に晶出していることが分かった。また、同時にジルコン結晶中の局所微量元素組成分析を行ったところ、Th/U、2価と3価のCe比、3価と5価のカチオン比が噴火の数万年前と直前で系統的に変化していることを発見した。これは地下でのマグマ上昇に伴う地殻成分の混入過程を示していると考えられる。このようにジルコンの結晶化年代と微量元素成分の分析を組み合わせることで、火山地下での地球化学的現象を時間スケールと共に議論することが可能となった。また、2020年度は当初予定していた野外調査によるジルコン試料の増加を達成することが困難であったため、新たにバルク岩石試料を対象とした湿式分析法の開発を行った。現在は既存の手法に則って試料の酸分解およびSrの分離を行う態勢を構築済であり、富士・箱根の火山岩試料を対象として試験的な実験を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザーアブレーションICP質量分析法による分析環境が整ったため、天然のジルコン試料を実際に分析することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍のため、2020年度は野外調査により試料を採取することが困難であり、すでに採取していた試料を対象に研究を行った。2021年度もこのような社会情勢が継続する可能性があるため、バルクの岩石試料を対象とした組成分析、Sr・Nd・Pb同位体分析環境を整える予定である。現在すでに所属機関のクリーンルームを使用して試料の前処理(酸分解)は行える状態にあるため、今後は測定対象元素の分離と同位体測定を行う態勢を構築していく。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍の影響で当初予定して野外調査を行うことができなかった。2021年度もこのような情勢が継続する可能性があるため、予定を変更してバルク岩石の湿式分析を行うために予算を執行する予定である。具体的には元素分離用の樹脂、実験用のビーカー、試薬等の購入に使用する。
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