2019 Fiscal Year Research-status Report
地震の個性や不均質を記述する確率微分方程式論的断層モデル
Project/Area Number |
18K13637
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
平野 史朗 立命館大学, 理工学部, 助教 (60726199)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地震学 / 震源物理学 / 断層破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震時に断層面上の滑り速度が満たすべき偏微分方程式の、最も基本的な形式を考察した。従来の震源物理学における順問題的アプローチとは異なり、地震波の観測から知られる経験則を満たすという要請から出発することで、Klein-Gordon 型という方程式を導いた。この方程式はこれまでにも順問題的に提唱されたことがあったが、全く異なる方向から類似のモデルが導かれることを示したのがひとつめの主要な結果である。次いで、この方程式に確率的な揺らぎをもたらすノイズ項を付加したものが断層の支配方程式であると考え、そのノイズが満たすべきパワースペクトル密度について考察した結果、まずはこの方程式についてのインパルス応答を調べることが重要と判断した。そこで差分法によりインパルス応答を近似計算したところ、方程式に含まれるパラメタ間の比に応じて、断層滑りが波のように伝播する場合と、拡散する場合の2通りが得られることが分かった。前者は通常の地震の振舞いとしてよく知られるが、後者はスロー地震のモデルとして提案されていたものであり、それらを包括的に説明しうるモデルであると考えることができる。また、それらパラメタの正負が断層面上の摩擦則において考えられてきた滑り距離依存性と滑り速度依存性に関係することも見出された。 以上の結果を、12月の American Geophysical Union 2019 Fall Meeting にて公表し、他研究者と議論した結果、今後の方向性についていくつかの可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目標としていた支配方程式の導出に大きな進展が見られた。支配方程式はいくつかの項の足しあわせから成り、全ての項について形式が完全に判明したわけではないが、残るは主に1つの項についてのみである。また文献調査により、現在考察中のモデルの妥当性を検証するための数値実験の可能性についても方向が定まった。加えて、今年度成果を12月に学会発表したことで、複数の聴衆からコメントを賜ることが出来、改善点なども明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の段階を以下の通り想定している: 1)支配方程式の完成、2)方程式に含まれる各項の物理的解釈、3)数値実験、4)観測事例との対比。 1)については前項記載の通り、残り僅かである。2)についても「概要」で示した通り理解が進んでおり、1)の完成次第続行する。3)については数学的方針は明らかになったものの、計算コストが障壁である懸念は払拭できていない。理想的には計算手法や計算機資源の強化による数値実験精度と速度の向上が望ましいが、それが困難である場合には、モデルの単純化によるコスト削減も検討する。4)についてはモデル挙動の平均的描像と分散が、観測事例とどの程度整合するかを定量比較する。ここで平均的描像については知見がよく蓄積・整理されているので比較しやすいが、分散についてはそれほどではないので、統計を取るためのサンプリングから検討が必要である。今後、学会等で多数の研究者と議論を重ね、その方針を模索する。
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Research Products
(1 results)