2021 Fiscal Year Research-status Report
地震の個性や不均質を記述する確率微分方程式論的断層モデル
Project/Area Number |
18K13637
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
平野 史朗 立命館大学, 理工学部, 助教 (60726199)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地震発生のメカニズム / 震源物理学 / 確率微分方程式 / 数理地震学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に考案した確率微分方程式モデルを精査し、国内外の学会で発表した他、査読付き国際誌に論文として投稿・出版した。以下、モデルの詳細と「4つの経験則」については2020年度報告を参照のこと。
まず、新たに開発したプログラムと高性能な計算機の導入により、先の確率モデルに従う断層挙動を高速にシミュレートできるようにした。これを用いて1000通りの断層挙動を計算し、それらが確かに「4つの経験則」に加え、更には断層面上の滑りと応力の関係についての法則を満たすことを統計的に確認した。これにより、モデルの妥当性が裏付けられた。また本モデルで利用した Besssel 過程の確率密度関数が数学分野の先行研究において得られていることがわかり、その性質を吟味した。その結果、数値シミュレーションとは別に、確率密度関数を用いて断層挙動の時間発展を確率的に予測する方針を提案した。
以上の成果を、日本応用数理学会、日本地震学会秋季大会、および米国地球物理学会 (AGU) 秋季大会にて発表した。また、査読付き論文としては Scientific Reports 誌に掲載された。論文の査読・修正過程においては、モデルの適用範囲や先行研究との比較において有益なコメントが得られ、それを踏まえて本研究の優位性が更に確かなものとなった。特に、確率過程を用いない先行研究で極度に単純化されていた断層挙動のモデルが複数の経験則を満たしえないことを、数学的に厳密な形で示したことで、確率過程を導入する必然性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度報告の通り、当初は断層挙動の時空間分布を記述するモデルを目指していたが、時間発展に限定することで非常に見通しが良くなった。そのため当初念頭にあった、断層挙動にまつわる複数の経験則のうち多くを内包した確率論的数理モデルを完成させ、査読付き国際誌に論文として投稿・受理されるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実績概要欄に記した確率密度関数から、更に情報を引き出せないかを検討する。本モデルの枠内では、この確率密度関数は断層面上の応力降下速度の時間発展に対応するものである一方で、地震学的に推定されるのは応力ではなく断層滑りなので、このギャップについて考察の余地がある。またこれまでは1回の地震についてのみ考察してきたが、採用した確率微分方程式自体は、ノイズを与え続ければ一度停止した後も確率的に (Gutenberg-Richter 則に従いながら) 地震を起こし続けることが可能なモデルと見なすことができる。よって、より長期的な地震活動についても同じモデルの延長線上で議論ができることが期待されるが、その場合に確率密度関数をどのように解釈し援用できるのか、更なる考察を要する。
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Causes of Carryover |
査読付き国際誌の Scientific Reports に論文を投稿し、オープンアクセス出版費用 (USD2090) を支出予定であったところ、請求が直接経費の年度内執行に間に合わない見込みとなり、2022年度に支払うため次年度使用を申請した。
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Research Products
(4 results)