2020 Fiscal Year Research-status Report
海洋リソスフェア内の水循環:トランスフォーム断層と海底断裂帯における水分布の解明
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18K13638
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
藤井 昌和 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (80780486)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 海洋リソスフェア / トランスフォーム断層・海底断裂帯 / 蛇紋岩化作用 / 海上・深海磁気異常 / 岩石磁気 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、新たな海底調査と既存アーカイブからの収集に基づき、6地域からの蛇紋岩およびカンラン岩試料、4地域からのガブロ試料を新たに集積した。これら試料の岩石磁気・物性分析を進め、また既存の分析データと合わせて、磁性と密度変化の関係を示す包括的なデータセットを構築した。その結果、岩相を含む物質科学データが、磁気異常データの解析、磁化構造モデリングの解釈に利用可能となった。この成果について、今年度は国際学会JpGU-AGU Joint Meeting 2020(古地磁気・岩石磁気セッション)、American Geophysical Union 2020 Fall Meeting(低速拡大海嶺系セッション)で発表した。 トランスフォーム断層・断裂帯の磁化構造モデルについて、西太平洋の納沙布断裂帯、四国海盆マドメガムリオン、インド洋マリーセレステトランスフォーム断層における観測データを収集、解析を行った。現在までの解析結果では、上部マントルの水循環(蛇紋岩作用)との関係を示唆する一様な傾向は掴めていない。これは地殻構造の不均質や古地磁気強度変動を考慮しきれていない事が原因であると考えられる。マドメガムリオンにおける調査成果について、今年度にBasch et al. (2020 Geochemistry, Geophysics, Geosystems) および秋澤ほか(2020 新地球Volume 1マントル特集号)として公表した。 上述の観測および解析に関する成果に関連して、蛇紋岩岩石磁気データの新たな解析手法に関する論文、熱水変質が海洋性地殻の磁化構造に与える影響に関する論文、海嶺軸オフセット近傍での深海磁気データの解析と磁化構造に関する論文の査読付国際誌3編、海域地球物理観測の総集および南半球のテクトニクスの総集を査読付和文誌2編を出版した。また、上述の成果を踏まえた北極域における展望について、国際学会The 11th Symposium on Polar Science(北極セッション)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩石磁気・物性研究について、新たな海底調査と既存アーカイブからの収集に基づき、6地域からの蛇紋岩およびカンラン岩試料を集積した。また、下部地殻の影響を考慮するため、4地域からのガブロ試料の収集も行った。対象は、四国海盆マドメガムリオン、中央インド洋海嶺、マリアナ海溝斜面、大西洋中央海嶺、南西インド洋海嶺、バルカン断裂帯、神居古潭である。これら試料の岩石磁気・物性分析を進め、磁性と密度変化の関係を示す包括的なデータセットを構築した。物質科学データを、磁気異常データの解析、磁化構造モデリングの解釈に利用可能な形に整備した。 トランスフォーム断層・断裂帯の磁化構造モデル推定について、西太平洋の納沙布断裂帯、四国海盆マドメガムリオン、インド洋マリーセレステトランスフォーム断層における観測データを収集した。海上磁場観測、深海ディープ・トウ磁場観測、深海自律型無人潜水機による磁場観測データの質は全て良好で、船体磁化補正を行い地磁気異常値を導出した。マルチビーム音響測深器で得られたデータを解析し、磁気・重力モデリングの境界条件となる海底地形図を取得した。これまでの解析結果に基づくと、トランスフォーム断層および断裂帯における磁気異常分布および磁化構造に関して、上部マントルの蛇紋岩作用との関係を示唆する一様な傾向は掴めていない。これは地殻構造の不均質(噴出岩の厚さや下部地殻形成過程の不均質)や過去の地球磁場(すなわら地殻の形成年代)を考慮しきれておらず、上部マントルのシグナルを直接観察できていないためだと考えられる。 水分布モデルの構築について、我々の観測結果と合わせて、熱場と水循環に関する数値モデル研究や大西洋における観測結果、カンラン石や輝石の実験室煮込み研究の知見も集約し、複雑な地質背景や地域性を含めたトランスフォーム断層・断裂帯の水分布モデルの立案を検討している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、課題1「岩石磁気・物性研究:蛇紋岩化反応と磁性と密度変化の関係を解明」で構築した物質データセットの知見を活かし、課題2「トランスフォーム断層・断裂帯の磁化構造モデル推定」における傾向の把握および物質的な解釈を完遂する。水循環と関連したマントル物質のシグナル(蛇紋岩化作用)に関する統合的な知見を引き出す事が主目的であるが、その傾向を引き出せない場合でも、地殻構造や磁化構造の不均質を生む原因、地域性を生む原因などについて考察し、トランスフォーム断層と断裂帯における磁気的特徴をまとめる。必要に応じて、他の航海で取得され利用可能となった海上磁気・地形データの解析を進めその結果も利用する。これらの結果を水分布モデル構築の基盤として、地球深部への水の供給口として重要かつ未探査のトランスフォーム断層と断裂帯の役割に関して新たな知見を提供する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の対応に伴って実験計画の遅延が発生し、計画に変更が必要になったため。次年度使用額は研究打合せおよび分析旅費に利用する予定である。
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[Presentation] Oceanic lower crust and uppermost mantle of the Shikoku Basin: insights from expeditions to Mado Megamullion2020
Author(s)
Yasuhiko Ohara, Kyoko Okino, Norikatsu Akizawa, Masakazu Fujii, Yumiko Harigane, Ken-ichi Hirauchi, Osamu Ishizuka, Shiki Machida, Katsuyoshi Michibayashi, Alessio Sanfilippo, Camilla Sani, Jonathan E. Snow, Kenichiro Tani, Hiroyuki Yamashita
Organizer
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
Int'l Joint Research
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[Presentation] Crustal accretion in a slow-spreading back-arc basin: Insights from the Mado Megamullion oceanic core complex (Shikoku Basin, Philippine Sea)2020
Author(s)
Valentin Basch, Alessio Sanfilippo, Camilla Sani, Yasuhiko Ohara, Jonathan E Snow, Osamu Ishizuka, Yumiko Harigane, Atlanta Sen, Kyoko Okino, Masakazu Fujii, Norikatsu Akizawa, Katsuyoshi Michibayashi, Hiroyuki Yamashita
Organizer
American Geophysical Union 2020 Fall Meeting
Int'l Joint Research
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