2020 Fiscal Year Research-status Report
水の放出・移動によるスラブ内地震発生の仕組みの解明
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18K13640
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森重 学 東京大学, 地震研究所, 助教 (70746544)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / スラブ内地震 / 温度構造 / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、東北地方や北海道において観測されるスラブ内地震(やや深発地震)の様々な特徴を、水の放出・移動の観点から説明可能かどうかを明らかにすることである。しかし研究を進める中で、水の放出場所・放出率に大きく関連するスラブ内部の温度構造に関する理解がまだ不十分であることが分かってきた。そこで本年度は主に沈み込み帯の温度構造に関する以下の2つの研究を行った。1つ目は熱伝導率の温度・物質依存性に焦点を当てたものである。実験的研究から、マントルの熱伝導率は温度上昇と共に大きく低下し、また海洋地殻の熱伝導率はマントルの半分程度であることが知られている。それらの効果を取り入れた数値計算を東北地方に対して行った結果、熱伝導率を一定と仮定した場合と比べてスラブ内部の脱水場所が最大10 km程度深さ方向に変化することを明らかにした。2つ目は熱伝導率の異方性に焦点を当てたものである。マントルの主要構成鉱物であるかんらん石は、転位クリープと呼ばれるメカニズムで変形すると結晶軸がある特定の方向に揃うことが知られている。またかんらん石は結晶軸の方向により熱伝導率が最大2倍程度異なる。これらのことから、マントル内部の熱伝導率は熱が伝わる方向により大きく異なることが期待される。そこで東北地方の沈み込み帯を対象に熱伝導率の異方性が温度構造に及ぼす影響を見積もった結果、あまり大きくないということが分かった。しかし今回の研究では熱伝導率の異方性をマントルウェッジ内部でしか考慮しておらず、今後の課題としてスラブ内部の異方性まで考慮することが挙げられる。現在これらに関する内容をまとめた論文を2編、国際誌に投稿中である。また1件招待講演も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方のスラブ内温度構造に関する論文を2編国際誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在投稿中の論文2編の受理を目指す。また今年度の研究で得られた最新の沈み込み帯温度構造モデルを用いてスラブ内における水の放出・移動の数値計算を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で研究時間が十分に取れなかったため。現在投稿中の論文掲載料として使用する。
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