2019 Fiscal Year Research-status Report
Structure determination of liquid Fe alloys at high pressure
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18K13644
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
河口 沙織 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 研究員 (00773011)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地球外核 / PDF解析 / X線回折測定 / ダイヤモンドアンビルセル / 液体鉄合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
外核に相当する高温高圧条件における液体鉄合金を扱った研究はその実験的困難さから着手されはじめたばかりである。申請者はこれまでに、液体鉄合金の弾性波速度を行い、地球外核組成への議論に強い制約を与えることに成功した (Kawaguchi et al., 2017)。しかし物性測定などの応用的な研究が行われ始めている一方、それら化学的・物理的性質を支配している液体鉄合金の構造=原子相関の解明を試みた研究は圧倒的に少なく、実験的に外核に相当する高圧下まで精密に構造解析を行った例はない。そこで本研究では放射光施設SPring-8においてダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧下におけるPDF(2体相関分布関数)解析を実現する。加えて本研究ではPDFの相補的な情報として、Fe吸収端に対するX線吸収微細構造(XAFS)測定を行うことにより、元素選択的な情報を得ることができる。両者を併せることで、液体鉄合金の構造解析を行うことが本研究の目的である。 本年度は、既知のアモルファス物質をDACに封入し、測定・解析することで昨年度試験した解析手法が 汎用可能であることを試験するとともに、実際のターゲット物質である純鉄,鉄硫黄合金を高圧印加し、レーザー加熱により融解しながら得た液体鉄のX線回折データを取得し、解析を行った。また、固体構造が融解する際の構造変化を追うべく、温度を変化させながら常圧における出発試料である固体Fe47Ni283S25のXRD測定、精密構造解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず常圧のSiO2ガラス、Baガラス、ダイヤモンドアンビルセルに封入した常圧下のSiO2ガラス、Baガラスのデータ取得・解析を行い、昨年度試験した解析手法が 汎用可能であることを示した。後半では純鉄,鉄硫黄合金を20 -40 GPaまで加圧、レーザー加熱により融解しながら得た液体鉄のX線回折データを取得し、本手法により解析を行った。加えて、本年度は常圧における出発試料である固体Fe47Ni283S25の100-400 KまでのXRD測定、精密構造解析も併せて行った。その結果を考慮すると、高圧における液体Fe47Ni283S25の第一近接ピークはFe-FeとFe-Sの相関を示していると示唆したものの、液体鉄硫黄合金のデータのみを用いてのそれ以上の解析は困難であった。今回純鉄を用いた結果については解析中であるが、鉄硫黄合金のデータ解析に際し、強力なリファレンスとなることは間違いない。また、常圧固体の精密構造解析、並びに格子定数の温度依存性から、固体Fe47Ni283S25のc軸方向の熱振動異方性が顕著であることを明らかにした。つまり、Fe47Ni283S25は融解する際にc軸方向に大きく膨張、原子が熱振動し、結果、構造が乱れていくということである。この考察は、高圧下における液体鉄硫黄合金の構造を解釈する際に重要な情報であると考えられる。 並行して、以前から取り組んでいたPDF解析による液体鉄硫黄合金の密度決定に関し、本年度、高エネルギーX線を用い取得したデータを併せることで、論文の執筆を開始した。2020年度に国際誌に投稿予定である。 以上を鑑みて、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は本研究の最終年である。引き続き放射光施設SPring-8における高エネルギーX線利用と本研究手法をより高い圧力下まで展開することで、最終的に100 GPaまでの高温高圧下における液体鉄、液体硫黄合金のPDF解析を行うことを目指す。加えて、申請者らは初年度、フランスの放射光施設であるESRFにおいて、同試料の外核の圧力条件に相当する140 GPaまでのFe吸収端に対するX線吸収微細構造(XAFS)データ取得を行い、データを有している。XAFSデータについては、最新の解析結果で、約40 GPaにおいてXANESスペクトルに変化が生じることがわかった。先行研究で報告されている液体純鉄のデータと比較すると、上記XANSスペクトルの変化はfcc構造・hcp構造それぞれの安定領域における融点直上の液体鉄のスペクトルを比較した場合の差異と酷似していることから、少なくとも20 GPa以上において、液体鉄硫黄合金は液体鉄と近い構造を示し、更に40 GPaにおいてfcc likeな構造からhcp likeな構造へと構造転移を生じるのではないかと推察している。現在、昨年度取得したデータを解析途中ではあるが、本年度に取得するより高圧下におけるPDFデータと、XAFSデータと併せ液体鉄硫黄合金の構造の解釈を行うことで、本課題を達成したいと考える。 以上の結果を、学会発表、並びに国際誌に投稿するべく、論文執筆も行う。
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Causes of Carryover |
国際誌投稿のための英文校正に用いるための費用であったが、論文投稿が2020年度にずれ込んだため、次年度使用とすることにした。
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Research Products
(4 results)