2019 Fiscal Year Research-status Report
なぜイシサンゴは深海で多様化できたのか―骨格構造で解き明かす深海適応史―
Project/Area Number |
18K13649
|
Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
徳田 悠希 公立鳥取環境大学, 環境学部, 講師 (30779765)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | サンゴ / 骨格構造 / アラゴナイト / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,海洋酸性化によるイシサンゴ類への影響が問題となっているが,実際には骨格が溶解するような深海環境においても強固な骨格を形成し多様化に成功している.しかし,そのような深海環境へのイシサンゴの適応メカニズムはほとんど明らかになっていない.本研究の目的は,これまで無機物質として研究がなされてきたイシサンゴ骨格を,無機物と有機物の複合材料としての観点から再検討し,骨格構造とその機能を深海適応の観点から明らかにすることである.そこで,本研究では,深海イシサンゴの特殊な骨格構造に着目し,1)骨格内アラゴナイト結晶の形態・構成・分布パターン,2)骨格内有機物の化学構造と分布パターン,3)骨格微細構造の物性,4)それらの系統間での差異を明らかにし,骨格の構造と機能を,深海環境への適応の観点から解明することを目的としている.本年度の研究ではイシサンゴ骨格中の有機物の特定を目指し研究を行った.Flabellum (Ulocyathus)亜属のイシサンゴ骨格を部位ごとに粉砕し,骨格を酸処理により溶解させた後,有機溶媒および精製水で骨格内有機物を順次抽出した.さらに,有機層および水層にそれぞれ含まれる有機物をカラムを用いて分離した.この結果,蛍光色素を含め複数の有機物の分離に成功した.これらの有機物についてNMRを用いて同定を行った. さらに骨格構造中の有機物の分布とその部位における骨格構造についても検討し,Flabellum (Ulocyathus)骨格において有機物が濃集した部分では,細かなアラゴナイト結晶から構成されるうろこ状の骨格微細構造が特異的に認められることが明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
微小硬さ試験装置を用いた骨格のビッカース硬さの測定を行う予定しているが,そのための試料の作成に時間がかかっているため.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度において,小硬さ試験装置を用いたビッカース硬さの測定を行い,骨格構造の機能形態を明らかにした上で,これまでの骨格形態学的解析結果の解釈を行う.
|