2019 Fiscal Year Research-status Report
最古堆積岩中の炭質物に生体分子の痕跡を探索する:手法の確立と適用
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18K13651
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
伊規須 素子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 特別研究員(RPD) (00518285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | STXM-XANES分光法 / 最古堆積岩 / 炭質物 / 顕微ラマン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,最古堆積岩中の炭質物の化学結合状態を明らかにすることを目標とする。 その目的を達成するため,(1)集束イオンビーム(FIB)加工による堆積岩超薄片作成と,(2)STXM-XANES分光法を用いた最古堆積岩中の炭質物の化学結合の解明の2つの基本計画を遂行する予定であった。しかし,前年度の研究成果から,当該試料に関して既に発表された論文中で重要な顕微ラマン分光分析のデータセットが不十分であることが分かったため,当初の研究計画を変更して,最古堆積岩中の炭質物の熟成度の再評価を中心に行うことを目標とした。 先行研究で安定炭素同位体比が報告された堆積岩29試料のうち,顕微ラマン分光分析のデータが欠如していた22試料の顕微ラマン分光分析を行った。Beyssac et al. (2002)に基づき炭質物の熟成温度を算出した結果,炭質物の熟成温度は約360~650℃以上であった。母岩から見積もられた変成温度と調和的な炭質物と,それらより低い値をもつ炭質物が存在することから,一部の炭質物は高変成度の変成作用を受けた後に混入した可能性が高い。薄片内で炭質物は鉱物粒子間か鉱物粒子中に分布するが,分布様式と熟成温度に相関は見られなかった。すなわち,全岩から得られた安定炭素同位体比には初生的な炭質物と二次的な炭質物の両者が含まれていたことを示唆する。 より初生的な炭質物の安定炭素同位体比を得るためには,炭質物の薄片内での分布やラマンスペクトルを考慮し,初生的な炭質物と二次的なものを分けて分析する必要がある。そのため,初生的な炭質物として,ガーネットあるいは石英にインクルージョンとして存在するグラファイトに着目し,顕微ラマンマッピング分析(X-Z方向)を行い,NanoSIMSによる安定炭素同位体比測定を行う候補を探索・選定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画を殆ど全て実行できたのでおおむね順調であったと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
NanoSIMSによる安定炭素同位体比測定を行い,真に初生的な炭質物の炭素同位体比を得ることを目指す。これまでに得た成果をまとめ学会・学術論文等で発表する。
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Research Products
(1 results)