2020 Fiscal Year Research-status Report
最古堆積岩中の炭質物に生体分子の痕跡を探索する:手法の確立と適用
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18K13651
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
伊規須 素子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 特別研究員(RPD) (00518285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 最古堆積岩 / 炭質物 / 熟成度 / 安定炭素同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,最古堆積岩中の炭質物の化学結合状態を明らかにすることを目標とする。 その目的を達成するため,(1)集束イオンビーム(FIB)加工による堆積岩超薄片作成と,(2)STXM-XANES分光法を用いた最古堆積岩中の炭質物の化学結合の解明の2つの基本計画を遂行する予定であった。しかし,研究を遂行する中で先行研究のデータセットに不十分な点があることが分かったので,当初の研究計画を変更し,最古堆積岩から真に初生的な炭質物を探し出し,その安定炭素同位体比測定を行うことを目標とした。 前年度までに光学顕微鏡観察と顕微ラマン分光分析により,分析試料を選定し,NanoSIMS測定用に成型した。しかし,試料のサイズがサンプルホルダーより少し小さかったため安定にセットするための治具を選定した。先行研究で全岩の安定炭素同位体比が報告された堆積岩29試料のうち,4試料のNanoSIMS測定を予察的に行った。その結果,泥岩中の鉱物粒間にある炭質物は分析箇所の特定・測定とも比較的容易に行うことができた。炭酸塩岩やチャートノジュールでは試料表面に特徴的な構造が少ないため分析箇所の特定がやや困難であった。泥岩中の鉱物に包有される炭質物やチャートノジュール中に脈状に分布する炭質物は表面に露出するサイズが小さいためビームを1μmに絞る必要があった。また,分析箇所の特定ができてもプレスパッタリング中に炭素の信号がなくなる場合があった。現段階の予察的分析で得られた炭質物の安定炭素同位体比は基本的に全岩のそれを支持する。 (2)に関してはこれまでに加工した試料に比べて表面に凹凸が殆どない試料のFIB切片化に取り組んだ。対象とした約35億年前の黒色チャートは,最古の海底熱水活動が記録される。FIB-SEM観察の結果,表面にマジックでマーキングするだけでは加工する領域を絞り込むのに不十分であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により,4月から6月は特別研究員の採用中断としたこと,所属機関への立入が制限されたこと,および外部機関での実験が延期となったことのため全体的に研究計画が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
FIB切片作成については装置に内蔵される位置合わせに関する機能を試す等行い,凹凸ない試料で効率的に加工位置を特定する方法を模索する。作成したFIB切片に対し,放射光施設でSTXM-XANES測定を行い,約35億年前の炭質物が有する官能基を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により,外部機関での実験が延期になり,旅費と実験消耗品の物品費が一部未使用となった。それに伴い,研究成果のとりまとめも遅れたので,成果発表のための学会参加費や論文投稿に関する費用も未使用が生じた。 放射光施設で実験を行うための国内旅費および物品費として使用する。また,国内会議での成果発表に関する費用ならびに国際学術誌での成果発表のための英文校閲費用・投稿料として使用する。
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