2020 Fiscal Year Research-status Report
ホイスラー構造を持つAuCuAl合金の延性化機構の解明と生体機能材料への応用
Project/Area Number |
18K13655
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
海瀬 晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (60802353)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体機能性材料 / 超弾性合金 / 粒界脆化 / 機械的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ホイスラー構造を持つAuCuAl合金の延性化機構の解明と生体機能材料への応用を目的とする.ホイスラー構造をもつ金属間化合物は,強磁性形状記憶合金,熱電変換材料などさまざまな機能材料としての応用が期待させるが,多結晶では非常に脆い.このためからAu2CuAl基合金の粒界脆化の機構を解明することで本合金の生体機能材料への実用化の可能性を検証する.昨年度は第二相としてfcc構造を持つα相の体積分率が増加することで延性の大幅な向上が確認され,α相を粒界上のみに形成させるといった組織制御を行うことでさらなる延性の向上が期待できることを報告した.しかし,これに伴いマルテンサイト変態温度は上昇してしまうため,生体機能材料として使用するための延性と体温近傍のマルテンサイト変態温度とを両立させることが困難であり,別な延性化手法が必要であると考えられる.そこで今年度は,マルテンサイト変態温度を低下させ,粒径を微細にかつ粒界の形状を複雑にさせることで延性を向上させたFeに着目し,α相を導入した合金にFeを添加することとした.その結果,α相を導入した合金にFeを添加することにより延性が向上していることを明らかにした.α相の導入は結晶粒径の微細化と粒界上に形成された変形が容易なα相によりき裂進展を抑制し,延性を向上させる.一方で,Fe添加はAuCuAl合金の粒径を微細にかつ粒界の形状を複雑にし,直線的な粒界一つあたりの長さを減少させることで,臨界き裂長さから推測できる破壊応力をすべり臨界応力以上となり,き裂発生前にすべり変形が生じ,延性を向上させる.これらのことから,異なる延性化手法である第二相(α相)の導入とFe添加の組み合わせによりAuCuAl合金の延性は大幅に向上することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,昨年度までの第二相の導入による機械的性質の向上と,添加元素による機械的性質の向上は,それぞれ異なる延性向上のメカニズムであると予想し,α相を導入した合金にFeを添加することとした.その結果,α相を導入した合金にFeを添加することにより延性が向上していることを明らかにした.Feの添加は,AuCuAl合金の延性を向上させるだけでなく,マルテンサイト変態温度も低下させることができるため,生体機能材料として使用するための延性と体温近傍のマルテンサイト変態温度とを両立させることができる可能性を見出した.おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
AuCuAl合金の延性を向上させる手法については順調に進んでいるが,複雑な粒界形状の形成過程と粒界特性の変化は,透過型電子顕微鏡を用いた組織観察と微小試験機を用いた双結晶の圧縮試験により解明する必要がある.双結晶の圧縮試験片の作製にこれまでも取り組んできたが,ようやく試験片の作製ができたので材料微小試験により機械的性質,形状記憶・超弾性特性を明らかにする.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた学会等による出張がオンラインもしくは中止になったため.使用計画としては実験に必要な機材の購入に使用するつもりである.
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