2018 Fiscal Year Research-status Report
薄膜残留応力によるナノベルトの自己変形を利用したゼンマイ型ナノ構造体の創製と応用
Project/Area Number |
18K13657
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
徳 悠葵 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (60750180)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ナノ材料 / ナノベルト / 応力解放 / 自己変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では独自に提案した金属被覆ナノワイヤの自己螺旋変形技術を発展させ,薄膜残留応力の分布を制御することにより,金属被覆ナノベルトに自己変形を発現させ,ナノゼンマイの創製を実現する. 平成30年度は研究目的に示した「I.ナノベルトの合成・形状の最適化」を実施した.本項目では,ゼンマイ形状へ変形させるための出発材料として,SnO2ナノベルトを合成した.SnO2ナノベルトは熱昇華法により比較的容易に大量合成することができるが,長さ・厚み・幅といった寸法の制御は従来困難であった.そこで本研究では,断面アスペクト比(幅/厚み)の制御を目指し,ナノベルト作製条件である熱昇華時におけるパラメータ(圧力・加熱温度・基板-原料間距離など)を網羅的に調査することによって,最適な断面を有するSnO2ナノベルト作製を試みた.本調査により,SnO2ナノベルトの各種寸法が熱昇華時の炉内圧力に大きく依存することを明らかにし,断面アスペクト比の制御を実現した.また,触媒粒子の工夫によって大量合成されるSnO2ナノベルトの寸法のばらつきを抑止し,均一に成長させることに成功した.これにより,高アスペクト比の断面を有するSnO2ナノベルト群の作製に成功した.さらに,作製したSnO2ナノベルトを単一に分離し,ガスセンサーとして応用を図った.ガスセンサーとしての機能を評価することにより,作製したSnO2ナノベルト表面の結晶構造について調査した.これにより,SnO2ナノベルトは特定の結晶面にガスセンシングに有効な機能性を有することを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は主にナノゼンマイ創製のためのコア材料,すなわちSnO2ナノベルトの合成および寸法制御を実現した.また,熱昇華法における触媒の工夫により,合成したナノベルトの数密度(本数)の制御にも成功している.さらに,SnO2ナノベルトの単結晶の特長を活かし,当初未計画であった高感度ガスセンサーとしての応用にも成功している.本ナノベルトを構成する酸化スズは,従来より広く半導体材料としてガスセンサーや透明導電膜,電界効果トランジスタなどへの応用が展開されている.これに対し本研究では,SnO2ナノベルトをガスセンサーに応用する実験において,今回成功した断面アスペクト比の制御によって異なるアスペクト比を有するナノベルトが単なる表面積の違いでは説明できない半導体性能の変化を示した.これは,特定の結晶面を広く形成できるナノベルトの特長であると考えられる.本研究の断面アスペクト比制御技術であれば,上記のような半導体材料としてのナノベルトの展開にも期待できる.以上より,次年度に予定している「Ⅱ.ナノゼンマイの創製」「III.ナノゼンマイを利用したナノアクチュエーションおよびエネルギー貯蔵の達成」に向けて,平成30年度の目標とした「I.ナノベルトの合成・形状の最適化」はおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
Ⅱ.ナノゼンマイの創製:Iにおいて作製したナノベルトを単一に分離し, コア流動法の適用によってゼンマイ形成を行う.ゼンマイ状に変化させるためには,ナノベルトの長手方向に異なる膜厚が分布するよう製膜する必要がある.これは,長手方向に薄膜残留応力の分布を発現させ,曲率の異なる変形を誘起するためである.具体的には,集中質量を先端に載せたマイクロカンチレバーを利用する.集中質量の大きさを調整することにより,ナノベルトの支持端側から自由端側に向かって回り込むスパッタ粒子を制御し,長手方向の不均一製膜を実現する.ナノベルトを支持するレバー付近では製膜過程において回り込み粒子が少なくなる一方,支持部と反対のナノベルト先端ではスパッタ粒子の回り込みによって比較的膜厚の大きな被覆が生じる.最終的に製膜後のサンプルをコア部のみ加熱流動させることにより薄膜残留応力を解放し,ナノゼンマイの創製を実現する.さらに,高帯電性・高弾力性・耐摩耗性を発現させるため,製膜条件および被覆材料とコア材料の組み合わせを網羅的に調査する. III.ナノゼンマイを利用したナノアクチュエーションおよびエネルギー貯蔵の達成:創製したナノゼンマイの全面に電荷を帯電させることにより,同符号の電荷が近接する際の斥力およびゼンマイの復元力を利用して伸縮アクチュエーションを実現する.また,帯電を保持することによってゼンマイの力学的エネルギー貯蔵を達成し,IIにて発現させるナノゼンマイの高帯電性・高弾力性によって貯蔵するエネルギーの高密度化を図る.最終的に,蓄えたエネルギーを任意のタイミングにて直接動作に変換できるゼンマイ型ナノアクチュエータとして応用を実現する.
|
Causes of Carryover |
平成30年度は,本研究計画期間中を通して利用する備品「超高温電気炉」を計上していたが,予定していた材料を低融点のものに変更し,さらに真空度の調整によって昇華点を制御したことにより,加熱炉の合成温度を下げることができたため,本研究グループ現有のチューブ炉にて対応し,超高温電気炉の購入を見送った.一方,高融点材料からナノ材料を創製するには不活性ガス中にて加熱し,さらに様々な導入ガスを用いた反応性の熱昇華法を実施する必要がある.これには真空ポンプ・高精度流量計などの新たな物品が必要であるため,次年度の予算の使用計画としている.これ以外は当初の計画通り,各種スパッタリングターゲットおよび試料保持用のカンチレバーを消耗品として計上している.同様に高純度ガスを消耗品費として計上している.
|
Research Products
(6 results)