2018 Fiscal Year Research-status Report
摩擦の物理に基づく塑性変形・破壊現象の統一的な予測と制御
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18K13658
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石井 明男 (シャードンバオ) 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80773340)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 摩擦 / 金属ガラス / すべり弱化 |
Outline of Annual Research Achievements |
破壊現象,摩擦現象においてすべり弱化は重要な現象(動摩擦の構成式で言えば(A-B)<0の場合)であり,そのメカニズムの理解は破壊・摩擦現象の理解及び制御において重要である.本年度は分子動力学法にてスティックアンドスリップ現象を観測することに成功した金属ガラスを対象に分子動力学法を用いてそのせん断破壊現象を解析し,せん断破壊現象のひずみ速度依存性の評価を試みた.その結果,分子動力学法を用いた計算ではシミュレーションにおけるひずみ速度の制限,また熱揺らぎの効果のため,せん断破壊現象のひずみ速度依存性をうまく評価することができなかった. そこで金属ガラスのせん断帯の進展過程とそのひずみ速度依存性を評価するための粗視化モデルの開発・構築を試みた.構築した粗視化モデルでは金属ガラスの変形単位であるShear Transformation Zone (STZ) を単位セルとし,その塑性変形を固有ひずみの変化で表すこととする.そして塑性変形によって生じた局所的な応力場・ひずみ場はマイクロメカニクスを用いて表現する.また系の時間進展は個々のSTZの活性化エネルギーを定義し,kinetic Monte Carlo法を用いて表現するとする.これにより,分子動力学法で問題となったひずみ速度の制限の問題を解決できると考える.さらに摩擦現象において重要となる「緩和」・「励起」の効果を取り入れるため,STZの活性化エネルギーの項に時間変化を影響を取り入れた.モデルのコーディングはおおむね完成しており,今後は構築したモデルの有効性の検討を行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属ガラスに対して,分子動力学法を用いて破壊現象・摩擦現象において重要となるすべり弱化を評価することはできなかったが,分子動力学法の問題点を解決するため,金属ガラスのせん断帯の進展過程とそのひずみ速度依存性を評価するための粗視化モデルの開発・構築を行った.当初の計画から変更は生じたが粗視化モデルのコーディングも概ね完成しているため,研究はおおむね順調に進展していると考える.構築した粗視化モデルでは構造の励起と緩和の効果を取り入れており,これを応用すれば,金属ガラスのせん断破壊現象の解析のみならず,結晶金属,ポリマーの塑性変形を解析することも可能であり,この解析結果を用いて当初の目的(摩擦の物理による塑性変形の統一的な予測と制御)を達成できると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
開発した粗視化モデルを用いて金属ガラスのせん断帯の進展過程とそのひずみ速度依存性を評価する.その結果を用いて,そのすべり速度依存性を温度と応力の関数として定式化し,金属ガラスのせん断破壊におけるすべり弱化を予測する構成式を構築する.また開発した粗視化モデルを応用し,結晶金属,ポリマーの塑性変形,さらには地震予知のために岩石のすべり変形に対しても適用できるかについて思案し,可能であれば同様の粗視化モデルを用いてそのひずみ速度依存性を評価し,そのすべり速度依存性を温度と応力の関数として定式化し,様々な構造材料や岩石における塑性変形,すべり変形におけるすべり弱化を予測する構成式を構築する.
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Causes of Carryover |
当該予算にて支払う予定だった海外出張費用を急遽別の予算より捻出することが可能になったため,予算に余りを生じてしまった.余った予算は翌年度の物品費,海外出張のための費用に充てたいと考えている.
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