2018 Fiscal Year Research-status Report
針に生ずるスティック・スリップ現象を活かした構造色プリンティング技術の開発
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18K13669
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
内藤 圭史 岐阜大学, 工学部, 助教 (50759339)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スティック・スリップ現象 / 構造色プリンティング / 摩擦 / 摩耗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,スティック・スリップ現象を利用した独自の加工法(SS 加工法)を,将来的に簡易・安価かつ描画可能な構造色プリンティング技術として応用化することを念頭に置き,加工工具に針を用いたSS加工法の確立を目的として,針のSS挙動,および,針のSSにより形成された構造と発現する色の関係解明を目指すものである.本研究は大別すると「①針のSSに関する知見の実験的取得及び針のSS加工法の制御」と「②針のSSによる構造色プリンティングの制御」の2テーマから成り,このうち初年度(H30年度)は①を実施した. 初年度の結果を簡潔に述べる.まず,現在のSS加工装置は工具に刃を用いることを前提に設計されたものであるため,これを針用に改造した.次に,過去の研究結果を参考に,針がSSを生じる条件の探索を行った.当初は良い成果が出ず苦しんだが,試行錯誤を繰り返し,最終的には針のSSによりフィルム表面に微細周期構造が形成される加工条件(入力条件)範囲を見出すことに成功した.また,SS加工では4種の入力条件((a)加工対象物の張力(おもりの重量),(b)針の刺込量(針の垂直方向位置),(c)加工対象物の移動速度(ウインチの回転速度), (d)針の自由端の長さ)を任意に変えることが出来る.工具が刃の場合の入力と出力(微細周期構造の形態:微細な穴のピッチや穴径,深さ等)の関係性は,過去の研究において明らかとなっていたが,工具が針の場合も同等かは不明であったため,これを実験的に明らかとすることを目的とし,入力条件を変化させた場合に得られる出力を走査型プローブ顕微鏡(SPM)によって調べた.その結果,入出力の基本的な傾向は工具の違いに拠らないが,針の場合の方がSSを起こすための入力範囲が狭いことが明らかとなった.以上,総括すると,初年度の研究により,針のSSを自在に制御し,針のSS加工法を確立するための礎が出来たと言える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,本研究では,計画通りにSS加工装置(元は工具に刃を用いることを前提に設計されたもの)を針用に改造し,針がSSを生じる条件の探索を行うことができた.後者に関しては.当初は良い成果が出ずに苦しんだ時期もあったが,試行錯誤を繰り返し,最終的には針のSSによりフィルム表面に微細周期構造が形成される加工条件(入力条件)範囲を見出すことに成功した.また,SS加工では4種の入力条件(前述)を任意に変えることが出来,入力の変更により出力(前述)を調整することが出来る.既に,工具が刃の場合の入出力の関係性については明らかとなっていたが,工具が針の場合も刃の場合と同様の関係性があるのかは不明であったため,これを実験的に明らかとすることを目的とし,入力条件を変化させた場合に得られる出力をSPMによって調べた.その結果,入出力の基本的な傾向は工具の違いに拠らないが,針の場合の方がSSを起こすための入力範囲が狭いことが明らかとなった. 以上の様に,本研究は初年度,計画通りに進めることが出来た.よって,現時点において,本研究は概ね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で既に上記①は完了したため,今後は②の研究を行う.ここで,②に関し,構造色発現のためには,基本的には可視光波長と同等の大きさの構造を作る必要がある.しかし,先行研究(刃のSS加工)では数十μmピッチの微細周期構造も虹色構造色を発現した.本研究(針を用いたSS加工)でも,既に初年度の研究において,数十μmピッチを有する微細周期構造の形成には成功しているが,残念ながらそれらは構造色を発現していない.そこで,今後はまず,針を用いたSS加工によって,構造色の発現する微細周期構造を形成し,その時の入力条件範囲を調べる.構造の形態は本年度同様SPMを用いて調べ,発現した色の特定は紫外可視分光分析もしくは目視により行う.また,構造色の発現は,物質表面の構造の形態に依存し,光の干渉・回折・散乱が絡み合った複雑な現象であるため,その発色機構の解明は容易ではないが,本研究ではFDTD(時間領域差分)法を用い発色機構を解明する.FDTD法の市販ソフトウェアは高価であるが,僅かにオープンソース版も存在するため,これを用いて,SS加工法により形成された微細周期構造の発色機構を解明する.
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