2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K13679
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
滝渡 幸治 一関工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70633353)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 潤滑剤 / その場観察 / 赤外分光法 / トライボロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度では,分子間相互作用(水素結合)を形成する潤滑剤試料を選定し,新規装置の製作が終了するまでの間,現有の装置を用いて潤滑状態のその場観察とトラクション係数の測定を行った.潤滑剤試料には脂肪酸添加油を用いた.添加剤としてアルキル鎖長が異なる脂肪酸を数種類と無極性の基油を用いた.潤滑状態のその場観察には,顕微赤外分光光度計と潤滑試験機を組み合わせた装置を用い,潤滑試験機にトルク計を付加してトラクション係数を同時計測した.静的状態で測定した赤外線吸収スペクトルから,いずれの脂肪酸も二量体を形成して基油に溶解していることが分かった.また,常圧粘度を測定したところ,アルキル鎖長が短いほど低粘度を示した.動的状態においては,いずれの脂肪酸もヘルツ接触域で濃度低下が確認され,基油濃度が高くなっていることが確認された.しかし,トラクション係数は脂肪酸を加えることで低下し,脂肪酸のアルキル鎖長が短いほど小さくなる傾向が見られた.ヘルツ接触域で脂肪酸の濃度が低下していたが,ヘルツ接触域に導入された一部の脂肪酸がトラクション係数に影響を及ぼしていると考えられる.また,ヘルツ接触域で脂肪酸二量体の水素結合が安定化していた.さらにトラクション係数についてはアルキル鎖長の影響も見られたことから,小さな活性化体積を有する脂肪酸二量体で流れが発生し,トラクション係数が減少することが示唆された.他に,高分子と水分子が水素結合を形成する高分子水溶液を試料として実験を行ったところ,常圧粘度が高い試料でも低いトラクション係数を示し,成分の濃度変化も確認された.前述の脂肪酸添加油の結果を踏まえながら,その潤滑メカニズムについても考察を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子間相互作用を形成する潤滑剤試料の選定と,現有の装置を用いた潤滑状態のその場観察,トラクション係数の測定ができた.一方,新規その場観察用潤滑兼せん断装置の設計は年度の前半で終了したものの,せん断試験の機構に関する再検討や仕様の追加,納入金額の予算超過などがあったため納品が遅れている.しかし,現有の装置で潤滑状態におけるデータの蓄積ができているため,現有装置と新規装置を相補的に用いることでこの遅延を最小限に留めることができると考えている.また,せん断試験機の機構については,当初膜厚制御および計測システムを付加することを検討していたが,膜厚計測システムが予算も含めて装置に設置することが困難であると判断した.その代わりに赤外線吸収スペクトルから膜厚を算出する機構を採用することとした.当初購入を予定していたシリコーンディスクは予算の関係上購入が困難と判断し,現有のシリコーンディスクなどを含めて様々な寸法のディスクを取り付けられるような装置の仕様とした.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,新規に導入したその場観察用潤滑兼せん断装置を用いて、潤滑状態のその場観察とトラクション係数の同時測定を行う。試料には,添加した脂肪酸が二量体を形成する試料や単量体を形成する試料,水が高分子と水素結合を形成する高分子水溶液,さらに他の官能基の組み合わせを用いる。得られた潤滑膜の赤外線吸収スペクトルから,潤滑膜構造とトラクション特性との関係を考察する。また,高圧試験で用いる装置(ダイヤモンドアンビルセル)については,予算の関係上購入が困難であることから,他機関(岩手大学等)に借りて試験を行うこととする.現有の高温セルと合わせて,高温と高圧条件における試験を行うことが可能であることを既に確認している.せん断試験の機構も確認しながら,各条件における水素結合の情報を得る.
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Causes of Carryover |
新規その場観察用潤滑兼せん断装置の設計は年度の前半で終了したものの,せん断試験の機構に関する再検討や仕様の追加,納入金額の予算超過などがあったため,該当年度分と翌年度分に請求した助成金とを合わせて支払いを行うことにした.
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Research Products
(1 results)