2018 Fiscal Year Research-status Report
金ナノ粒子のプラズモニック加熱によるナノスケール流体制御
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18K13688
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
瀬戸浦 健仁 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (90804089)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / レーザー加熱 / 金ナノ粒子 / 局在プラズモン / オプトフルイディクス / 熱泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ・マイクロスケールの流路を含む微小流体デバイスは、様々な分野で広く利用されており、さらなる微小化や流量の精密制御は、単分子レベルでの検出・選別への展開の観点から期待されている。本研究は、ナノ・マイクロスケールの微小流路中で金ナノ粒子をレーザー加熱し、温度・圧力・表面張力勾配をつくりだすことで、微小空間の流れ場を制御することを目的としている。平成30年度は主に、微小流路のモデル系として、薄いカバーガラスを2枚張り合わせ、液層の厚さが5マイクロメートル前後のサンプルチャンバーを作製し実験を行った。実験では光学顕微鏡を用いて高分解能の対物レンズで試料を観察しつつ、同時にスポット直径3ミクロン前後まで集光したレーザーを金ナノ粒子の水分散液に照射し、局所的な温度上昇を誘起した。その結果、浮力が駆動する自然対流は流路の体積が小さすぎるために駆動されないが、レーザー強度を上げてナノ・マイクロサイズのバブルが形成すると、バブル界面の表面張力勾配によって高速なマランゴニ対流が駆動されることを見出した。よって微小流路中においても、金ナノ粒子の光加熱によって流れ場を制御できることが原理的には示された。 他方で、レーザーの照射条件を適宜変更すると、薄いサンプルチャンバー内で金ナノ粒子が熱泳動する様子が観察された。熱泳動とは、個液界面が急峻な温度勾配に晒された際に駆動される熱浸透圧流による物質輸送であり、対流とは異なる。この熱泳動は、ナノ空間中での流れ場の制御および物質輸送に応用できる可能性があるため、今後さらなる検討を行うことを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、フェムト秒レーザーを用いた多光子レーザー加工でガラス基板内部にナノ流路を作製する予定であった。しかし当該年度内に研究代表者が他機関に異動し、現機関では同等スペックのレーザーが利用できないため、ナノ流路の作製方法については再検討する必要がある。ただ、現在の微小流路のモデル系を用いた実験でもナノ流路中での流れ場制御に向けた知見は蓄積されており、研究の進展は概ね順調といえる。その他には、本研究のために必要な要素技術として、レーザーの照射スポットの局所的な温度を非接触に測定する手法を開発しすでに論文発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は現環境でのナノ流路の作製方法を検討し、ナノスケールでの流体制御実験に取り組む。さらに、対流やナノバブル生成に加えて、平成30年度の検討で熱泳動も流れ場制御のためには有効な駆動力と考えられるので、これについても検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者が所属機関を異動したため、試料作製に用いる予定だったフェムト秒レーザーが使用できなくなり、試料作製の方法を再検討している。次年度使用額は本来、平成30年度に試料作製に充てることを予定していた。平成31年度は、作製方法を再検討した後に、繰り越した費用で試料原料を購入する。
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Research Products
(3 results)