2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K13689
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関本 敦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00814485)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乱流 / スケーリング / Large Eddy Simulation / 壁面モデル / 非線形 / 不変解 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラージエディシミュレーション(LES)では大きいスケール運動を精緻にシミュレーションし,普遍的な小スケール渦運動はモデル化する.高精度な計算結果を得られるため,今後は産業分野でも広く用いられるようになると考えられるが,従来のモデルを用いて流れを正確に予測するためには壁面近傍の解像度を高くする必要があり,計算コストが大きくなるため改善が必要である.LESによる大スケール渦運動の非定常なダイナミクスは,モデルを用いずにナビエ・ストークス方程式を解く直接数値計算(DNS)のものと良く似ており,LESにおいても運動エネルギーを平均流から受け取り,小スケールな渦運動へと渡す非線形メカニズムが再現されている.支配方程式の不変解の分岐構造も低レイノルズ数のDNSの結果とLESの結果で類似している事が分かりつつあり,本研究では,この性質を用いて,壁面近傍の渦運動のダイナミクスを低次元モデル化してLESに必要な格子数を削減し,かつ,格子に依存しない渦粘性モデルの構築を目指す.
これまでに,計算データ及び検証用の乱流DNSデータベースを保存するためのファイルサーバの整備,国内(九州大学,東京大学)のスーパコンピュータ利用による並列計算コードの整備を行った.十分な並列性能を達成できたことに加え,壁面伝熱性能も評価できるようにプログラムの改変を行った.今後は乱流伝熱のLESも視野に入れることができる.
また,Couette-Poiseuille流れのスケーリング則についての海外共同研究の成果がJ. Phys.: Conference series から出版され,これを発展させた逆圧力勾配境界層乱流の乱流統計量のスケーリング則を見出すことができた(「ながれ」掲載,及び,J. Fluid Mech.誌へ論文投稿中).このスケーリング則を用いて,より広範囲に適用できるLESモデルの開発が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
壁乱流のLESの実施のための壁面モデルが必要であるが,スペクトル・ガラーキン法へのプログラム実装のためには大きなプログラムの改変が必要で時間がかかっている.予定していた渦粘性モデルでは,壁面の粘性効果が大きい領域との接続に問題が生じている.壁面近傍における渦粘性モデルをフィルター幅が壁面からの距離の関数となるフィルター関数と捉え直し,一様剪断流のLESの不変解の分岐構造を壁面剪断流に接続する予定で,プログラムを作成中である.LESにおける壁面の境界条件として,Slip-wallモデルなどを検討する必要があり,試行錯誤に時間を要する.また,壁面に垂直な方向の格子点数を増やすと計算効率が落ちるため,効率的に計算を行うためにMPIとOpenMPのハイブリッド並列化を実装する必要があり,その実装には時間を要した.一方で,使用するプログラムは伝熱問題にも拡張できていることに加えて,逆圧力勾配境界層スケーリング則も用いることで,より一般的な形状な周りの流れにまで適用可能なLESの開発が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
既存の一様剪断流のLES不変解を,壁がある非一様流れにまでホモトピー法によって接続することを試みる.その際のLESの壁面モデルについてはSlip-wallモデルが有用であると考えられ,実際に海外の研究グループがLESの壁面モデルに有効であることを示している.壁面近傍の秩序渦の階層構造の性質を有する不変解の探索が鍵となる.また,系の回転や密度成層乱流にまでモデルの検討範囲を広げることができるため,それらのDNSデータベースの構築を継続して行い,新たなLESモデルの検証用データとする.作成したモデルについては,代表者が所属する化学工学領域の実用的なシミュレーション課題に応用する.
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Causes of Carryover |
大容量ファイルサーバーのCPUの性能を下げて,価格が見積もりよりも安くなったため. 繰越分は次年度の学会旅費と大規模計算機の利用料金及び計算データを保存するハードディスクの増設に当てる予定である.
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