2018 Fiscal Year Research-status Report
高ビオ数多孔質体へ適用する構造体内熱伝導性を加味した界面熱流束モデルの構築と評価
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18K13698
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
佐野 吉彦 静岡大学, 工学部, 助教 (90720459)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔質体 / 伝熱 / 高ビオ数 / 3Dプリンター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,多孔質体の伝熱で広く採用される2エネルギーモデルにおいて,ビオ数が大きい(熱伝導率が小さい)場合には,伝熱量の見積もりができないことを問題提議とし,高ビオ数に適用できる多孔質体伝熱モデルを提案することである.そのために,熱透過係数を新たに導入し,構造体内の熱伝導を加味することで,従来モデルで採用される空間平均温度差では表現できない,構造体表面からの伝熱量の見積もりを行っていく.対象とする多孔質体は3Dプリンターにより作成する.本研究では従来モデルと本モデルの伝熱予測精度を実験的に定量評価するだけでなく,ビオ数に基づいて両モデルの適用範囲を明確化していく. 初年度を終えた研究実績としては,本研究の要である,熱透過係数を測定する実験装置が完成し,実際に熱透過係数の非定常性の観測ができたことである.この熱透過係数とは,多孔質構造体内部の非定常熱伝導を加味した構造体の熱コンダクタンスである.すなわち,局所体積平均理論で採用する空間平均量だけでは表現できない構造体内部の温度分布を熱透過係数により表現することで,構造体表面からの伝熱量の見積もりが可能となる.シングルブロー法を採用し,実験的に熱透過係数の非定常性の観測ができたことは,本研究の実績として,大きな成果である.粒子充填層において熱透過係数をモデル化したところ,ビオ数とフーリエ数の関数で表現でき,構造体因子における補正係数を与えることにより,十分に熱透過係数の非定常性を再現できることが分かった.また,直接数値シミュレーションも実験に並行して行っており,上述の実験の裏付けを行いながらモデルの導出を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画では,熱透過係数の計測装置の作成,実験試料の作成,みかけの熱伝導率の測定および直接数値シミュレーションを行う予定であった.熱透過係数の計測装置の作成は,既に研究実験の概要で述べた通り,完成している.研究構想段階では,熱のみに焦点を当てる実験を想定したが,より幅広いビオ数での実験を行うために,研究室保有の温湿度計を実験装置に組合すことで,水蒸気の物質移動も測定できる実験装置を作成した.実験試料の作成では,3D金属プリンターによる銅ベースの構造体の造形精度を向上するために,委託企業と共同で検討を繰り返すことにより,年度末までに2種類の材料で12構造体を作成した.この実験試料の作成に時間を要したため,みかけの熱伝導率の測定に関しては,2年度目以降に検討することにした.その代わりに,当初,2年度目以降に行う予定であった熱透過係数の計測を粒子充填層にて行った.実験結果に関しては,研究実験の概要で述べた通りであり,熱透過係数の非定常性が観測された.さらに,2年度目以降に行う予定のモデル化に関しても,先行して検討を行った.また,直接数値シミュレーションに関しては,熱透過係数に注目する数値シミュレーションコードを組み終え,上記の実験を数値シミュレーションで再現することにより,実験に加えて,より詳細な熱の移動を検討できるようにした. 実験試料の作成において,時間を要したため,みかけの熱伝導率の測定に関しては,当初の予定から遅れているが,その代わり,2年度目以降に行う予定の熱透過係数の計測およびモデルの作成を先行して行った.その他の研究計画項目は全て順調に進んでいる.以上のことを踏まえ,研究の進捗状況は概ね順調に進んでいると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目の研究計画では,初年度で完遂できなかったみかけの熱伝導率の測定を作成した全ての構造体にて計測していく.さらに,初年度で作成した熱透過係数の計測装置を用いて,構造体および材質が違う条件の多孔質材の熱透過係数を計測していく.様々な流速条件下で熱透過係数を計測することで,熱透過係数を予測するモデル式を考案する.現段階では,熱透過係数はビオ数とフーリエ数の関数と考えており,構造体因子における補正係数を掛け合わせることで,様々な構造体における熱透過係数を表現できると想定している.そこで,各構造体で熱透過係数を計測し,特にこの構造体因子における補正係数の見積もりを行うことで,補正係数のデータベース化を作成していく予定である.一方,熱透過係数の物理的な意味合い,およびその値の妥当性に関しては,初年度で作成した直接数値シミュレーションを駆使することにより,理論的に検討していく予定である.そのため,2年度では,常に実験と数値シミュレーションを並行して行うこととする.さらに,現行理論と熱透過係数を導入した本理論で伝熱見積もり量を比較することで,本理論の優位性についても検討すると同時に,現行理論のビオ数適用範囲ついても検討していく予定である.当初の計画案で,これらの内容は2年度目と3年度目の研究内容であり,2年度目は常に実験と数値計算を行うことになるが,なるべく多くの試験体で上記の検討を進める予定である.
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Causes of Carryover |
構造体作成が遅れたことで,支払いが年度を超えてしまった.支払いが遅れただけのため,使用計画に関して変更はない.
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