2018 Fiscal Year Research-status Report
革新的スマート制振プレートの実現と高い電気機械結合時の制振解析に関する学理の開拓
Project/Area Number |
18K13713
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
浅沼 春彦 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (10757298)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | セミアクティブ制振 / 同調スイッチ / セルフパワード / 圧電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大振幅の振動を、大面積且つ広周波数帯域に渡って自律的に制振することが可能な圧電型スマート制振プレートの実現を目指し、まず、その複雑な電気-機械連成現象を解明することが出来る解析技術の確立、セルフパワードで自律駆動する制振回路の設計と評価に取り組んだ。
1.圧電型スマート制振プレートの電気-機械連成現象を解析するには、トランジスタを多用する制振回路と非線形項を含む複雑な機械振動を連成解析する手法を確立する必要がある。本研究では数値計算ソフトと回路シミュレータを併用した電気-機械双方向連成解析法を開発して、圧電型スマート制振プレートの電気特性(圧電電圧)と機械特性(変位)を算出することが出来た。従来の解析式を用いた手法は、スイッチ回路の単純モデル化や線形の機械振動方程式を前提として構築されているため実際の電気-機械特性を再現できないが、本研究の解析手法によってより現実の電気-機械特性を再現することが可能となった。
2.セルフパワードで自律駆動する制振回路は、主にスイッチ回路とコイルによって構成され、変位が最大/最小に達する際にスイッチが自律的に閉じて圧電電圧を昇圧させ、制振性能を高める回路である。先に開発した電気-機械連成解析法の利用や実験を通して、スイッチ回路内のコンパレータ部とスイッチ部のトランジスタ、コイルの選定を検討した。実験から制振性能を評価したところ、完全セルフパワード制振回路を適用すると50%以上振動振幅が低減できることが分かった。電気-機械パラメータの最適化や電池などの定電圧源の利用で更なる制振性能の向上が可能と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由で、おおむね当初の予定の通り進んでいる。圧電型スマート制振プレートの複雑な電気-機械特性の解明にはトランジスタを多用する制振回路と非線形項を含む機械振動を連成解析する必要があるが、これを数値計算ソフトと回路シミュレータを併用して開発した。この解析技術によって、電気-機械パラメータの最適化や制振性能の予測が可能となり、圧電型スマート制振プレートの設計が容易にできるようになった。また、解析の結果から、加振力や加振加速度によって系の電気-機械結合状態や構造の見かけの剛性が変化すること、加振角速度の増加に伴って変位が上昇すると電気-機械結合状態は強くなり構造の見かけの剛性は小さくなり(ソフトスプリング効果)、それらが制振性能に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。これらの結果は、従来の解析式を用いた手法では予測できない事象である。開発した解析技術の利用や実験を通して、どの素子パラメータが制振性能に大きく寄与するか探索して回路のトランジスタやコイルの選定を行った。試作の完全セルフパワード制振回路では、現時点で50%以上振動振幅が低減できることが分かった。解析の結果では、回路内の寄生容量や寄生抵抗の影響を減らせば、更なる制振性能の向上が可能であることが分かった。本研究成果の一部を日本機械学会 2018年度年次大会と日本機械学会 北陸信越支部 第56期総会・講演会で口頭発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度は主に、実験セットアップの構築、圧電型スマート制振プレートの電気-機械連成解析手法の確立、セルフパワード制振回路の試作と評価を行った。しかし、基本的には最も影響のある基本振動モードの制振を考慮していた。本年度は、より広い周波数帯域を大面積に渡って制振することが可能な圧電型スマート制振プレートの実現に取り組む。 その実現に向けて、制振プレート上の圧電素子の設置箇所や形状の設計、複数の振動モードを想定した解析技術の確立や制振回路の設計に取り組む。はじめにFEM解析によりプレートの固有振動モードを先に解析し、その固有振動モードを基に圧電素子の配置を決定してその運動方程式を導く。解析法は前年度に確立した手法を基に、複数の振動モードを想定したものに拡張させて開発する。また、高次の振動モードは周波数が高く、スイッチの速さや電気ノイズの影響が大きく出てくる。はじめに、高速信号制御装置でスイッチを制御して制振性能が高まるスイッチタイミングを明らかにして、その後に回路での実装を検討する。
|
Causes of Carryover |
非常に少額の研究費で、必要な消耗品の購入が出来なかった為。
|