2018 Fiscal Year Research-status Report
多足生物に見られる多様な波の生成原理と機能の解明,およびその応用
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18K13723
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安部 祐一 東北大学, 工学研究科, 助教 (90778622)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多足歩行 / 感覚フィードバック / 波 / 肢間協調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多足生物の歩行に見られる多様な波(進行波,後退波,わきだし波)の生成原理と機能を数理的に解明し,その生物学的妥当性を検証しつつ,そこから明らかになる知見をロボットに応用することを目的としている.平成30年度は,「脚の接地情報に基づく分散した振動子系の位相調整により,自己組織的に多足生物にみられるような秩序だった波が得られる」という作業仮説のもと,これまで提案してきたシンプルな数理モデルの解析により,(1)進行波と後退波の選択原理と(2)わき出し波と沈み込み波を生成する力学構造の違いについて調べた.それぞれ具体的に結果を述べる. (1)進行波と後退波の選択原理について議論するため,シンプルモデルを非対称にした際の挙動について動力学シミュレーションを用いて調べた.モデルの前方(後方)の質量を一方に比べて重くした場合に,進行波(後退波)のみが創発することを確認した. 前後の非対称性によって波が選択される可能性が示唆された. (2)数理モデルの力学構造を解析的に調べ,沈みこみ波が存在できない理由を明らかにした.具体的には,脚の接地時の位相調整が同一タイミングで起きるという仮定でモデルを単純化した.次に,周期解条件下で隣り合う振動子の位相差の写像関係を理論的に導出した.この写像構造から,沈み込み波が周期解となりえないことを明らかにした.一方,わき出し波は写像構造から周期解として存在できることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した平成30年度の研究実施計画では,これらの研究結果を学会発表や論文執筆して世に発表する予定であったが達成できなかった.理由は,(2)の理論解析を行う上で,任意個数の脚の接地順序を考慮するのが非常に困難であったためである.本研究では仮定をおいてこの問題を避けることにしたが,この方針を決めるのに時間を要した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,交付申請書に記載したように,平成30年度までの数理モデルを更に発展させる.具体的には,より生物学的に詳細な力学モデルを構築し,平成30年に議論した波の生成,選択原理が成り立つかという点を調べる.また,詳細な力学モデルを用いて,生成された多様な波の運動性能に対する機能の解明を目指す.
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,今年度予定していた論文投稿を見送ったことに伴い発生した未使用額である.平成31年度の研究遂行において,論文投稿費用などに使用する予定である.
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