2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a novel environment control system for plant growth using plasma discharge under water.
Project/Area Number |
18K13735
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
高橋 克幸 岩手大学, 理工学部, 准教授 (00763153)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放電処理 / プラズマ / ラジカル / 水耕栽培 / アレロパシー / 培養液 / 農工連携 / 植物育成環境制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
水中気泡内で発生したパルス放電によって処理した培養液を用い農産物を栽培するシステムを構築した。農産物にはキュウリを用い、キュウリに対し強い生長阻害を示す2,4-ジクロロ安息香酸(DCBA)を培養液に20μMの濃度で混入させた。約24時間の放電処理で20 Lの培養液中のDCBAはほぼ全て分解され、分解生成物として塩化物イオンや、ギ酸などが残留することがわかった。放電処理した培養液を用いて18日間のキュウリの栽培を行い、栽培期間中の地上部高さ、葉の長さと幅、SPAD値、栽培後に収穫した植物体の葉面積、乾燥重量、根の長さ、クロロフィル含有量を評価し、植物体への影響を調べた。その結果、2,4-ジクロロ安息香酸を混入していないコントロール区に比べ、2,4-ジクロロ安息香酸を与えた試験区では明かな生長阻害効果が見られた一方、放電処理をしその後pHを調整した試験区においてはコントロール区とほぼ同等に植物が生長した。また、根の様子を電子顕微鏡にて観察したところ、2,4-ジクロロ安息香酸を混入した区では表皮組織が損傷している一方、コントロール区、放電処理区ではきれいな状態を保っていることがわかった。一方で、放電処理後にpHを調整しない場合、プラズマによって生成される硝酸塩によって、培養液のpHは3以下に低下し著しい生長阻害を示した。これらの、適切なpH調整が必要ではあるが、プラズマ処理は生長阻害物質による影響を除去できる手法として期待できることが明らかになった。 研究期間全体においては当初の予定どおり、植物生長阻害物質の分解効果とそのメカニズム、プラズマ進展とラジカル発生および処理効率の関連性、水耕栽培を用いたプラズマ処理養液の植物の生態への影響をそれぞれ明らかにした。その結果、プラズマによる水耕栽培における植物生育環境の制御技術の確立に必要な学術的知見を十分に得ることができた。
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