2018 Fiscal Year Research-status Report
A new proposal of magnetic spiral arc method for high speed DC interruption
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18K13746
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
平山 智士 滋賀県立大学, 工学部, 助教 (70759274)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 直流遮断 / ガス遮断器 / 電磁流体解析 / アーク放電 |
Outline of Annual Research Achievements |
事故の波及速度が速いネットワーク型直流送電システムの実現には,直流電力の高速度遮断技術の確立が課題となっている。従来の機械アーク方式遮断器は,アーク放電部で生じたわずかな電流・電圧変動をLC共振回路により増幅し電流零点を生成する仕組みであるが,このプロセスに時間がかかり過ぎるために直流送電システムに要求される遮断時間を達成できていなかった。本研究では,外部印加磁界によりアーク放電の特性を制御できる点に注目し,新たな高速直流遮断技術として磁気スパイラルアーク方式を提案する。電磁流体解析により,遮断器内部のアークがスパイラル化する条件を明確にし,さらに,解析結果から遮断時間を評価することで提案方式の有効性を見極めることを目的としている。 今年度(2018年度)は,直流遮断器の検討に用いる電磁流体解析プログラムの開発と並列計算用PCクラスタの構築を行った。数値解析プログラムの開発に関しては,分散メモリ型並列計算に対応した3次元電磁流体用解析プログラムをベースとして,それに共振回路解析モジュールを組み込むことでスパイラルアークと共振回路の相互作用を取り扱うことのできる解析プログラムを開発した。また,消弧ガスとしてSF6と空気の2種類を想定しており,それらの消弧ガスに対応した50kK程度の高温領域までの化学種組成,熱力学特性,輸送係数,放射・吸収特性といった基礎データ計算用の熱化学平衡プラズマ解析プログラムの開発を行った。それらの解析プログラムを用いて,共振回路を接続した条件でのスパイラルアークの振る舞いと回路挙動を,簡易な構造のラバルノズルアークの3次元非定常解析から検討した。解析結果より,磁界を印加しない場合には電流零点が生じない条件においても,外部磁界の印加により速やかに電流零点が生じる結果を確認し,直流遮断における外部磁界印加の有効性を示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018度当初では,(1)磁気スパイラルアーク直流遮断方式の検討に用いる電磁流体解析プログラムの開発,(2)分散メモリ型ライブラリMPIを導入した並列計算用PCクラスタ環境の構築,(3)スパイラルアークを形成させるために必要な条件(電流,外部印加磁界,ガス圧力)の明確化を予定していた。これらの計画のうち,(1),(2)は2018年12月までに完了し,2019年1月から7月までに(3)を実施する予定であり,おおむね順調に研究を進められている。なお,(3)に関して,外部印加磁界を解析パラメータとした解析については既に完了しており,外部磁界印加が電流零点の生成に極めて有効であることを示唆する解析結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度から継続して,スパイラルアークを形成させるために必要な条件の明確化のために,アーク電流,ガス圧力をパラメータとした数値解析を行う。磁気スパイラルアーク方式では,スパイラルアークの電圧振動周期と共振回路の周期を同程度に設定する必要があると予想されるため,従来の機械アーク方式の共振周期である0.1~0.5msの範囲でスパイラルアークの電圧振動周期が得られる条件を探す。これらの検討結果をもとにして,消弧室の流路,アーク接触部の構造,共振回路を設計し,実際の遮断条件,遮断器構造を模擬した解析条件での検討に移る予定である。この検討では,磁気スパイラルアーク方式の直流遮断時間を数値解析から評価し,その有効性を見極めることが目的である。具体的には,電極が離れアーク放電が発弧してから,電流零点が生成されアークが消弧されるまでを遮断時間と定義して,目標とする数ミリ秒の遮断時間を実現可能であるか否かを検討する。
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Causes of Carryover |
研究を遂行するために必要な能力の計算機が,申請時に想定したよりも安価で購入できたため物品費を抑えることができた。また,国際会議参加費と論文投稿料が2019年決済となったため,物品費の節約分と参加費・投稿料の合計約12万が残り,次年度(2019年度)使用額となった。国際会議参加料と論文投稿料を除いた,上記の残額分については,学会参加のための旅費として使用し,当初の予定よりも多くの学会で研究成果の発表を行う計画である。
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