2018 Fiscal Year Research-status Report
適応制御による超高密度フォトニックネットワークの研究
Project/Area Number |
18K13756
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 洋二郎 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10722100)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光ファイバ通信 / フォトニックネットワーク / 変復調 / ディジタル信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
増加の一途を辿る光ファイバ通信需要に対応するために,通信基盤であるフォトニックネットワークの大容量化は急務である.しかし,実現可能な通信容量は光ノードで生じるスペクトル狭窄効果によって厳しく制限される.この制限を超えた大容量フォトニックネットワークを構築するためには,光信号の物理的伝送特性とネットワークの信号制御を同時に考慮した適応的ネットワーク運用が求められる.本研究は,スペクトル狭窄効果緩和のための新規技術を提案した上で光信号の伝送特性を明らかにし,それに適する変調方式,信号経路および周波数帯域を割り当てることで大容量化を実現するものである. 本研究を完遂するために解決すべき課題は以下の5つに分割される.ネットワークのサブシステムである(A)送信器,(B)光ノード,(C)受信器におけるスペクトル狭窄効果補償技術の開発,(D)補償技術を考慮した伝送特性の解析,および(E)伝送特性に基づく適応的ネットワーク制御により大容量化を行う.H30年度は課題A,C,D,およびEについて検討を行った.課題Aに関しては,送信器のディジタル信号処理によりスペクトルを適切に成形することで良好な信号品質が得られることを示した.課題Cに関しては,受信器のディジタル信号処理においてスペクトル成形と系列推定を結合することで伝送距離を最大2.3倍に延伸可能であることを示した.課題Dに関しては,課題Aおよび課題Cにより得られた技術を組み合わせることで伝送距離のさらなる延伸が可能であるとの見通しが得られている.課題Eに関しては,変調方式,信号経路および周波数帯域を適応的に割り当てることで最大1.8倍の周波数利用効率向上が確認された.これらの成果に関して,学術論文誌(英文)3件,国際会議4件,国内会議7件の発表に至った.さらに,本成果に関する発表に対して,指導学生がIEEEおよびIEICEより表彰を受けた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究において解決すべき課題は,(A)送信器,(B)光ノード,(C)受信器におけるスペクトル狭窄効果補償技術の開発,(D)補償技術を考慮した伝送特性の解析,および(E)伝送特性に基づく適応的ネットワーク制御により構成される.当初の計画では,H30年度は課題Aの100%,課題Cの75%,課題Dの60%を終了する予定であった.一方,研究期間全体に対する現在の達成度は,課題Aは100%,課題Cは100%,課題Dは80%であり,当初の研究計画に先行する結果が得られた.上述のように,送信器および受信器におけるディジタル信号処理技術はそれぞれ完成している状況であり,さらに送受信器におけるディジタル信号処理を統合することによって相乗効果が得られることも確認している.これらの成果に関して,光ファイバ通信分野における世界最高峰会議である欧州光通信会議(European Conference on Optical Communication, ECOC 2019)において口頭にて発表した.さらに,R1年度に行う予定であった課題Eの適応的ネットワーク制御にも着手し,既に50%が終了している状況である.変調方式,信号経路および周波数帯域を同時かつ適応的に制御することで,周波数利用効率の飛躍的向上が可能であることを定量的に確認している.本課題に関しては,既に成果の一端を論文に纏め,権威ある学術論文誌であるIEEE Photonics Technology Lettersにおいて発行済みである.以上のように,当初の予想を超える進展が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り,当初の研究計画以上の成果が得られている.このため,R1年度では,R2年度に実施を予定していた課題についても先行して着手する予定である.具体的には以下の手順で研究を進める.第一に,課題Bの光ノードにおけるスペクトル狭窄効果の補償技術に関する検討を進める.その後,課題Aの送信器における補償技術,課題Bの光ノードにおける補償技術および課題Cの受信器における補償技術の全てを統合した上で,課題Dである補償技術を取り入れた際のフォトニックネットワークの伝送特性を評価する.ここで,伝送特性評価のためには莫大な数のデバイス特性パラメータが存在するため,並列計算機による広範なシミュレーションを実施する.さらに課題AからDの取り組みによって得られた技術および知見を駆使した適応的ネットワーク制御方式を考案し,フォトニックネットワーク全体の周波数利用効率の向上を図る.この評価は大規模なネットワークシミュレーションにより実施される.続いて,伝送実験に着手する.フォトニックネットワークを構築し,これまで得られた結果の妥当性を伝送実験による信号品質評価を通じて実証する.ここで,伝送距離が数10㎞~数100kmの都市規模ネットワークおよび数100㎞~1,000㎞超の基幹回線ネットワークを模擬した光ファイバ伝送路を使用して実験を行う.さらに,変調方式や周波数帯域を変更し,それぞれの伝送特性を包括的に評価する.この実験により,当初の計画で予定していた「現行フォトニックネットワークの5倍の周波数利用効率」という数値目標を達成する予定である.本研究成果により,次世代の情報社会を支える大容量フォトニックネットワークの実現が期待できる.
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