2019 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of implicit observer design inspired by distributed autonomous navigation of ants colony
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18K13776
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
末岡 裕一郎 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50756509)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 群ロボット / 状態推定 / メモリ機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,自然界の蟻がフェロモンを用いて実現する環境適応的ナビゲーションの行動メカニズムを探求する.申請者は,群れ行動を実現する鍵が,フェロモンによる“重ね合わせの性質”だと気づき,重ね合わせが成り立つ物理量を群れとして共有すると,「近所でどの程度の仲間が働いているか」を推定する:陰的オブザーバを設計できると分かった.さらに,行動設計と組み合わせることで,自律分散的なナビゲーションが可能となるため,本研究では,ロボットシステムへの応用を狙い,匂いと同じ“重ね合う性質”を持つ物理メディア:音,光を題材として,シミュレーション解析・実機検証を通じて,それぞれの物理メディアに適したメモリ機能の設計法と陰的オブザーバ設計法を提示することを目的に研究を進める. 本年度は,前年度に引き続き,フェロモンを活用するエージェント群によるシミュレーションを行い,陰的オブザーバの鍵を握るメモリ機能の設計について詳細に解析した.その結果,近所の状況を推定し,エージェント群の行動設計にうまく活かせるケースと,活かせないケースが存在することが判明し,どのように行動設計に活かすかを明らかにした. また,実世界において,音というデバイスを用い,ロボット同士の音による推定実験に取り組んだ.主結果として,一定距離間に相手が存在するケースにおける相手の認識,および相手の状況(向き・姿勢)の認識が可能であることが分かった.さらに,音ならではの特性:回折を利用して,ロボット間に障害物が存在したとしても,相手を認識し,相手の向きや姿勢を推定できることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定していた初年度の研究計画どおりに研究を進めることができている.実際の蟻の採餌行動をヒントにしたシミュレーションモデルの構築や解析を進めたことで,ロボットに実装するべき機能を明確にした.また,実世界におけるロボットデモの実験は,アイデアの妥当性だけでなく,さらなるロボット制御への応用にまで活用できる可能性が示唆された. 以下,今年度に取り組んだ実機開発について具体的に述べる.音をデバイスとして,お互いが通信できるようなロボットシステムを開発した.ロボットにはマイク,スピーカを取り付け,お互いの通信をARMマイコンを通じて処理し,パソコンで解析できるよう設計した.まず,近所にいる相手の音をどの程度聞くことができるのかといった基本的な音の拡散範囲の検証,さらには音ならではの特性を活かした実験にも取り組んだ.その結果,障害物を超えた位置にいる,相手の存在に気づき,また相手の状況(向きや姿勢)を推定できることに気づいた.そして,音という物理量は,その性質上,多数の大雑把な状況推定よりも,少数の正確な推定向きであることに気づいた.来年度は,光を用いた実機実験も実施予定であり,最終的には音や光という物理メディアに応じた状態推定システム法の確立を狙う.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は2つのアプローチから研究を進めていく予定である. 1.機械学習に基づくメモリ機能に対するボトムアップ的構築 2.音・光デバイスを用いた陰的オブザーバ設計原理の検証 我々の目的である,ロボット群の協調した群行動の実現に向けて,お互いどのような状況を知ることが効率的な群行動の実現にふさわしいのか,機械学習によるアプローチによって調べる.このアプローチにより,相手のどのような状況を推定することが良いのか知ることができるため,陰的オブザーバのより一般的な理論への拡張が期待できる.また,それらにて構築した理論を具体例として,実機実験にて検証していく.音や光を用いることで,それぞれによる陰的オブザーバ設計をどのように実現し,いかにロボット行動制御へ応用していくか調べていく予定である.
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Causes of Carryover |
本年度は,研究目的に対して,少数のロボットを用いた実機実験を行い,アイデアを具現化する際の足がかりを作ることに注力した.来年は台数を増やした実機実験を予定しているため,そのための費用として使用する.
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