2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代都市インフラシステム構築のための動的インセンティブ設計・制御法
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18K13781
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
和佐 泰明 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (60793560)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 制御工学 / 動的インセンティブ設計 / ゲーム理論 / 契約理論 / 都市インフラシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では次世代都市インフラシステムの基盤技術創出のための理論的構築を目指して、競争関係にある個人最適の均衡状態と全体最適の矛盾を解消する動的インセンティブ設計法の開発を目的とする。この目的を実現するために、本年度は大きく分けて次の3つの課題を実施する。(I)動的インセンティブ設計・制御法の理論的構築(II)提案する動的インセンティブの効果解析(III)電力システム及び交通システムによる提案手法の有効性検証。 課題(I)(II)については、まず線形システムに対する最適な動的インセンティブ設計法と付随する最適制御則に関して、数学的厳密性を保証したまま理論的に導出することに成功した。つぎにその成果を電力システムの基本モデルに適用し、プリンシパルの評価パラメータに対する物理的性能の影響とエージェントの不確実性に対するリスク感度の影響を定量的に分析し、設計法の有効性と良好な性能を達成できることを確認した。本課題に関連する成果は国内主要学会から学術奨励賞を受賞した。 課題(III)については、次年度以降の検証に必要となる交通システムの基本モデルの構築を行った。まず、現実的な設定を踏まえた車両ごとの車線利用特性を考慮したミクロ数理モデルを構成した。構築したモデルは現実のマクロ現象の再現ができ、車両ごとにインセンティブを自然な形で追加することができ、インセンティブによる交通流適正化の実応用を視野に入れた検証が可能となった。この結果は研究開始当初に想定していた方法よりも理論的に扱う数理モデルに親和的で実用性の観点で優れている。また、特定のインセンティブ手法に対する性能評価を行い、インセンティブが有効であることまでを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題(I)(II)については、当初の計画通り、線形システムに対するインセンティブ設計法の理論構築を完了した。また、電力システムの数理モデルを用いた数値検証を基に、プリンシパルの評価パラメータに対する物理的性能の影響とエージェントの不確実性に対するリスク感度の影響を定量的に分析し、設計法の有効性と良好な性能を達成できることを確認した。課題(III)については、本提案設計法の枠組みを組み込むための交通システムの基本モデルの構築を当初の予定より早く着手し、完了した。また、特定のインセンティブ手法に対する性能評価を行い、インセンティブの有効性を確認した。以上のことから、研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(I)については、課題解決の過程においてインセンティブを組み込んだ動的システムの安定性の分析が可能であるというアイデアを着想したため、その厳密化に取り組む。また、当初の予定通りモデルの一般化の検討を行い、動的インセンティブ設計法の一般理論構築の完了を目指す。課題(II)については、課題解決の過程においてリスクとインセンティブの関係性を定量的に見出すことができたため、その理論的分析も視野に入れる。課題(III)については、当初の想定通り、より詳細な電力システムと交通システムのモデルに適用することで本提案手法の実用性を明らかにする。次年度はこれまでの成果をまとめ、国際論文誌に投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
当初予定していた物品と旅費が少なく済んだため。次年度では本研究課題に関連する論文校正費及び論文別刷費の支出の予定があり、その費用として充てる。
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Research Products
(2 results)