2019 Fiscal Year Research-status Report
光電気化学反応における触媒/溶液界面構造の解明と制御
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18K13784
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 正寛 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40805769)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水分解 / 第一原理計算 / 光電極 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能なエネルギー社会を実現する鍵の一つとして水素エネルギーが注目されている。光触媒・光電極(以下単に光触媒)によって太陽光を用いて水を分解し、水素(および酸素)を製造する方法を実用化するためには、より高効率・高耐久な水素製造用光触媒の開発が不可欠である。そこで、本研究では、水分解に関するin situ(光電気化学反応が起きる環境における)光触媒/電解液界面の幾何構造(半導体表面における電解液の分子原子の吸着・配向状態)および、電子構造(半導体側と電解液側の電子準位の接続状態・界面準位の状態密度)の測定法を開発し、測定結果と第一原理計算による解析との比較を通じて、ミクロレベルでの光触媒性能の評価方法を確立することを目的としている。 本年度はオープンサーキットポテンシャル法を用い、GaNなどのバルクの欠陥の少ない半導体電極材料に関して、半導体/電解液界面の電子準位接続およびその光照射依存性を調べた。これに加え、Ambient pressure (AP)-XPS実験による界面の電子構造測定、第一原理計算とあわせた幾何構造の同定をおこなった。また、AP-XPS実験結果をもとに第一原理計算によって半導体/電解液界面構造を予想することができるか調べた。その結果、第一原理計算によって吸着構造のみならず電子準位接続まで予想することができることがわかった。さらに、オペランドな(実デバイス動作)条件を模擬した半導体/電解液界面構造の第一原理モデリングをおこなった。英文論文誌一本がすでに採録されており、さらにもう一本を英文論文誌に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では本年度までに比較的結晶品質の良いGaN電極を測定対象とし、GaNの清浄表面および、水の吸着種を含む系のキャラクタライゼーションをおこなうとともに、半導体溶液界面についてOCP測定を、半導体水吸着系についてAP-XPS測定を行い、第一原理計算によって半導体/電解液界面モデル化方法を構築することを予定していた。これらの実験および計算項目すべて遂行してきた。AP-XPS測定では十分な光強度をもって光照射を行えるようにした結果、表面構造によってsurface photo voltage (SPV)が変化する様子を捉えることに成功している。また、OCP測定に関しては清浄GaN表面に加え、表面修飾をしたGaN表面や他種半導体材料/電解液界面に関する実験も行っている。さらに実験結果を詳細に解析するためのインピーダンス分光など一連の測定や、デバイスシミュレータを改良した計算モデリングも行っている。上述したように、本研究成果としてすでに英文論文誌一本が採録されており、加え、一本を英文論文誌に投稿している。これらのことから本研究は順調に進んでいるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように本研究の第一原理計算を用いたモデル化の部分に関しては、一通りの解析は終わっている。とはいうものの、より精度の高い計算手法(理論レベル)を用いることでこれまで定性的にしか議論できなかったバンドアラインメント(電子準位接続状態)を定量的に評価することができるようになる。また、現在は比較的小さなモデルでかつ電子状態や幾何構造が収束しやすい系を対象としているが、表面修飾や表面改質の効果を含めたモデル化を行うことも視野に入れている。これらの計算は計算コストが大きいため、追加の計算機を購入する予定であったが、インテルのCPUの供給が世界的に滞っているため購入が遅れた。延長期間にこれらの点を解決する。
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Causes of Carryover |
本研究の第一原理計算を用いたモデル化の部分に関して、すでに一件論文が掲載されているように一通りの解析が終わっている。とはいうものの、より精度の高い計算手法(理論レベル)を用いることでこれまで議論できなかったバンドアラインメントを定量的に評価することができるようになる。同計算方法は計算コストが大きいため、追加の計算機を購入する予定であったが、インテルのCPUの供給が世界的に滞っているため購入が遅れた。
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Research Products
(2 results)