2018 Fiscal Year Research-status Report
連続した界面のヘテロ接合創製と結晶シリコン太陽電池特性の向上
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18K13790
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今村 健太郎 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60591302)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シリコン太陽電池 / ナノシリコン / ヘテロ接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、結晶シリコン表面をナノメートルサイズまで溶解させることで、結晶シリコンよりも広いバンドギャップを有するナノ結晶シリコン層を結晶シリコン表面に形成し、ナノ結晶シリコンとバルクシリコンによって形成される急峻なバンド勾配によってキャリア再結合を防止することで、太陽電池特性を向上させることを目的としている。ナノ結晶シリコン層は、フッ化水素酸と過酸化水素水の混合溶液中に浸漬した結晶シリコン基板に白金触媒ローラーを接触させることで形成した。白金ローラーがシリコン基板表面に接触することで反応が進行するため、白金接触の均一性の向上、反応条件の検討をおこなった。形成したナノ結晶シリコン層のフォトルミネッセンス測定から、反応時間の増加とともにナノ結晶シリコン層からの発光波長が高エネルギー側にシフトし、最大で~1.9eVのピークエネルギーを示すことが明らかとなった。ナノ結晶シリコン層のX線光電子スペクトル、赤外吸収スペクトル測定から、ナノ結晶シリコン表面が水素で終端されていることがわかった。この結果は、フォトルミネッセンスが酸化膜に由来するものでなく、バンド間遷移に由来することを示しており、ナノ結晶シリコン層によるバンドギャップの拡大を示唆している。さらにケルビンプローブフォース顕微鏡を用いたナノ結晶シリコン層の測定では、接触電位差の変化からナノ結晶シリコン層の伝導帯がバルクシリコンの伝導帯よりも高エネルギー側にシフトすることが示唆された。形成したナノ結晶シリコン層の表面パッシベーションを塗布型のシリコン酸化膜形成剤、ヨウ素エタノール溶液を用いて検討したが、少数キャリアライフタイムの向上が確認されなかったため、パッシベーション方法の検討が重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バンドギャップが拡大するナノ結晶シリコン層の形成条件の検討についてはすでに達成しており順調である一方、30年度に予定していたナノ結晶シリコン層の構造やエネルギーバンド構造の解明にはまだ追加の測定や解析が必要と考えられる。31年度に予定していたナノ結晶シリコン層のパッシベーション、ボロン拡散について、すでに検討を開始していることを加味し、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ結晶シリコン層/結晶シリコン構造を太陽電池へ応用するには、ナノ結晶シリコン表面の効果的なパッシベーション方法の開発とナノ結晶シリコン層への最適なボロン拡散が必要であるため、今後はパッシベーション方法、ボロン拡散の検討をおこなう。現状のパッシベーション方法では、少数キャリアライフタイムの向上が確認されていないため、その原因を解明し、効果的なパッシベーション方法を見出す。ボロン拡散においては、フェルミ準位の制御が重要であるため、拡散深さとともにケルビンプローブフォース顕微鏡で評価し、電子に対する障壁高さが最大となるボロン拡散条件を見出す。開発したパッシベーション方法とボロン拡散制御によって、太陽電池特性の向上を図る。またナノ結晶シリコン層の物性解析も継続しておこない、得られた物性から太陽電池特性のシミュレーションをおこない見込まれる太陽電池特性の向上値を明らかにする。
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Causes of Carryover |
ナノ結晶シリコン層形成装置の調整に予想以上の時間を要したため、サンプルの測定や分析が不十分となり、予定していた測定にかかる費用が主な未使用額となった。各種測定はナノ結晶シリコン層の物性解析に必須であり次年度にも継続しておこなうため、原子間力顕微鏡のプローブ等の消耗品、その他分析装置の使用料として次年度に支出予定である。
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