2018 Fiscal Year Research-status Report
ファセット構造を利用したサファイア基板上テルル化亜鉛薄膜の面方位制御技術の開発
Project/Area Number |
18K13792
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中須 大蔵 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (40801254)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | II-VI族化合物半導体 / テルル化亜鉛 / 分子線エピタキシー / サファイア / 極点図法 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気光学効果を利用したテラヘルツ波の高感度検出応用に向け、面方位を制御したサファイア基板上高品質テルル化亜鉛(ZnTe)薄膜を作製することを目指す。本研究では、サファイア基板上に形成可能なファセット構造に注目し、ファセット構造を有するサファイア基板を用いた分子線エピタキシー法によるZnTe 結晶の面方位制御の実現を目的とした。サファイア(0001)面や(10-11)面基板上に成長させたZnTe薄膜は格子不整による結晶性低下という問題はあるものの良好なエピタキシャル成長をしている。この配向関係を利用し、サファイア基板上ZnTe薄膜の配向性が制御できないか検討した。 サファイア(1-100)面基板を熱処理すると、表面に(1-102)と(10-11)で構成された周期的なファセットが生じると報告がある。そこで、同様に熱処理で基板表面にファセット構造が現れる面方位基板を調査することを目的の1つとした。 各種面方位サファイア基板を熱処理したところ、(11-20)面をわずかに傾けた基板においても周期的なnmオーダーの構造が形成されたが、これは(11-20)面を有するステップ-テラス構造であることが明らかになった。サファイア(1-100)面でのみnmオーダーの異なる2種類の面方位からなるファセット構造を持つ基板が得られた。サファイア(1-100)面基板に傾きをつけると、熱処理によって表面にナノファセット構造が形成されるまでの時間(潜伏時間)に変化が生じた。特に、[1-102]方向にサファイア(1-100)面基板を傾けたとき、ジャストのサファイア(1-100)面基板よりもはるかに潜伏時間が長いことが明らかになった。[1-102]方向に傾いたサファイア(1-100)面基板においても熱処理時間を長く伸ばすことで、より安定で周期的なナノファセット構造を得ることが出来るようになることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ナノファセット構造を有するサファイア基板上ZnTe薄膜の成長機構を解明することで、ZnTe薄膜の配向を制御し、単一ドメイン配向で大面積ドメインとして作製することを目的とする。具体的には、(1)制御したナノファセット構造を有するサファイア基板上にZnTeの薄膜成長をMBE法により行い、サファイア(10-11)によるZnTe薄膜の面方位制御という仮説の検証を行うこと、(2)バッファ層やオフ角のついた基板上にZnTe薄膜を作製し、ZnTe薄膜の大面積ドメイン化を目指すことである。 まず、ファセット構造を有する基板によるZnTe薄膜の面方位制御が可能であるかを明らかにするために、各種面方位基板を高温熱処理し、基板面方位と異なる面を有するナノファセット構造が生じるかを明らかにすることを目標としていた。この内容に関しては、ほぼ全ての面方位基板において、ファセット構造が形成されるかを試せており、順調に推移していると考えている。また、これらの熱処理によって作製したファセット基板上にZnTe薄膜の作製も行っており、(1)のサファイア(10-11)によるZnTe薄膜の面方位制御という仮説の検証もすでに行い始めているところである。また、(2)のバッファ層の形成条件などの成長条件の検討もZnTe薄膜の作製とともに行っているところであり、今後、単一ドメイン配向で大面積ドメインをもつ配向を制御したZnTe薄膜の作製が可能か検討を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究はおおむね順調に進展したため、今後は、ナノファセット構造を制御して形成したサファイア(1-100)面基板上に作製したZnTe薄膜の配向性の解析を中心に行う。バッファ層条件や基板の熱処理条件、成長中の基板温度や原料の分子線強度比などの薄膜成長条件と作製したZnTe薄膜の配向性を比較して、ZnTe薄膜の面方位制御に関する知見や大面積単一ドメイン化に関する技術の開発を行う。 サファイア(1-100)面基板を熱処理すると生じる(10-11)面と(1-102)面の表面積の割合がサファイア(1-100)面基板にオフ角をつけることで大きく変わる。従来のサファイア(1-100)面ナノファセット基板では、ZnTe(111)//{10-11}ナノファセットの関係で薄膜が成長していたが、{1-102}ナノファセットの割合が大きくなると、同じZnTe(111)//{10-11}ナノファセットの方位関係ではない薄膜が成長する可能性が生じてくる。そこで、表面における{1-102}と{10-11}の割合それぞれが大きな基板を用意し、それらの基板上にZnTe薄膜の作製を行う。これらの試料における{10-11}ナノファセット由来の配向と{1-102}ナノファセット由来の配向をそれぞれ調査し、ナノファセット基板上ZnTe薄膜の成長機構を調査する予定である。
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Causes of Carryover |
学会出張費を他の予算で補うことが可能であったため、出張費の支出分を実験消耗品代に充てることが可能となったが、未消化分が出来てしまい、次年度使用額が生じてしまった。次年度使用額も実験消耗品代に充てることを考えている。
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