2018 Fiscal Year Research-status Report
ホイスラー合金/導電性酸化物接合における界面巨大磁気抵抗と磁気センサへの応用
Project/Area Number |
18K13793
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中谷 友也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (60782646)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 巨大磁気抵抗 / 非磁性スペーサー / ホイスラー合金 / 磁気ヘッド / 磁気センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
非磁性金属元素Agと、導電酸化物をIn-Zn-Oを同時スパッタによって混合したAg-In-Zn-Oを面直電流巨大磁気抵抗(CPP-GMR)素子の非磁性スペーサー層として用いた。強磁性層に実用的な多結晶のホイスラー合金Co2(Mn0.6Fe0.4)Geをもちいて、室温で50%を超えるMR比を得た。これは科研費申請当初の目標値をすでにクリアしているデータである。微細構造解析の結果、実際の膜中のスペーサー層はAg-In-Zn-Oではなく、Mn-Zn-Oマトリックス中に、Ag-Inが分散したナノコンポジット構造であることがわかった。Mnはホイスラー合金層から拡散したものであり、金属MnとIn-Oの酸化還元反応によって、ナノコンポジット構造ができると考えられる。電流はAg-Inに集中して流れ、電流狭窄によってMR比の増大が起きると説明できる。 また、酸化物にZnO, In2O3, MnO、非磁性金属元素にCuを用いたスペーサー(前駆体)も試したが、MR比はAg-In-Zn-Oを超えるものは得られず、最適なナノコンポジットが形成される前駆体材料の条件があるのだと思われ、今度の材料開発指針のためには、ナノコンポジットの組織形成メカニズを明らかにする必要がある。 磁気ヘッドへの応用上不可欠であるスピンバルブ構造において、膜構造とプロセスの最適化をおこない、層膜厚20nmのセンサ膜構造において30%のMR比を得た、これは数年後に実現されるであろう2 Tbit/in2のハードディスクの面記録密度に対応できる値であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目にして最終目標値であるMR比50%を達成した。スピントロニクス薄膜素子中で酸化還元反応がおこりナノコンポジット構造ができ、実用特性が向上することを見い出したため、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノコンポジット構造のスペーサー層は、ナノスケールの磁気センサへの応用には素子ばらつきの原因となるため基本的に不適である。それを解決するために、コンポジット構造のスケールが数nm以下のナノコンポジットが得られるスペーサー前駆体材料を開発する。 当然ながら、強磁性ホイスラー合金層のスピン分極率を改善することがMR比改善には不可欠であるため、より高規則度・高スピン分極なホイスラー合金層を、実用に不可欠である多結晶・低温熱処理(300℃程度)で実現する合金と作製プロセスの開発を推進する。
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Causes of Carryover |
物品費が余ったので、平成30年度にするより翌年度に繰り越して有効活用することにした。
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