2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K13795
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Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
穴田 智史 一般財団法人ファインセラミックスセンター, ナノ構造研究所, 研究員 (40772380)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電子線ホログラフィー / 太陽電池 / 光照射 / 電圧印加 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
透過電子顕微鏡(TEM)内の試料への光照射と電圧印加を同時に実施できる試料ホルダーの設計・開発に成功した.光照射は,試料ホルダーに石英ファイバーを内蔵し,キセノンランプから発信する光を試料近傍まで伝送することにより可能とした.電圧印加は,2つの試料台にそれぞれ導線を電気的に接続し,TEM外部の電源につなげることで可能とした. また,電圧印加時のGaAs太陽電池素子構造の電子線ホログラフィーその場観察を行い,太陽電池内部の電位分布変化を高精度且つ高確度に評価することに成功した.通常,半導体のTEM用薄膜試料の表面には電気的に不活性な層が存在することが知られており,正確な電位分布評価の妨げとなっていた.本研究では,試料を収束イオンビームにより楔型に加工し,膜厚と試料を透過した電子線の位相変化との関係を高精度電子線ホログラフィー(位相シフト法)により評価することで不活性層の問題を解決した. 本研究において作製した試料ホルダーを用いることで,TEM内の試料への光照射と電圧印加を同時に行うことが可能となった.そのため,電子線ホログラフィー技術と組み合わせることで,動作時の太陽電池内部の電位分布をナノメートルスケールでその場観察できるようになった.このような評価は,太陽電池の動作・劣化の反応過程やメカニズムを解明する上で重要である.また,光照射中の試料の電位分布を正確に評価する技術は,将来的に光触媒反応や光磁気効果など様々な光照射誘起現象を電子線ホログラフィー観察するという研究分野への波及効果が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光照射・電圧印加用TEM試料ホルダーの設計・開発において,試料ホルダーをTEMに挿入した状態でTEM内の真空を保つため,ホルダー内部を真空封止する必要があった.しかし,光照射用の石英ファイバーと電圧印加用の導線をホルダー内に通す構造であったため,通常の方法では真空封止が困難であった.本研究では,特注のOリングを用いることで真空封止を行い,常用ホルダーの同等の真空度を達成することに成功した. また,試料への電圧印加のため,試料台は絶縁シートや絶縁ネジを用いることで電気的に独立させた.しかし,絶縁体が試料近傍に存在すると電子線により帯電し,TEM観察に影響を及ぼすため,電子線ホログラフィーによる定量評価が困難であった.本ホルダーでは,絶縁体を金属膜・板などでカバーすることで帯電を防止した. 上記の真空封止や絶縁体の帯電対策などを施したホルダーを作製するために多大な時間を要した. しかし,試料ホルダーの作製と並行してGaAs太陽電池素子構造の電圧印加その場観察を進めてきたため,研究の遅れは十分カバーされたものと考えている.本研究により太陽電池の電位分布を高精度且つ高確度に評価する技術を確立できた.
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Strategy for Future Research Activity |
光照射・電圧印加用TEM試料ホルダーを用いて各種太陽電池の電子線ホログラフィーその場観察を行い,動作時太陽電池の電位分布挙動を高精度に評価する.具体的には,GaAs太陽電池,アモルファスシリコン太陽電池,CIGS太陽電池を試料として,それらに光・電流を導入して電位分布測定を行う.動作時の太陽電池を観察することにより,太陽電池の光電変換・劣化メカニズムを解明することができる.
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Causes of Carryover |
試料ホルダーの真空封止,帯電対策などに余分な費用がかかったため,キセノンランプ一式を揃えて購入することができなかった.そこで,キセノンランプの一部であるライトガイドと付属品のみを購入し,所属機関(ファインセラミックスセンター)が所有するキセノンランプに取り付けて代用した.そのため費用が削減され,次年度使用額が生じた. 次年度使用額は,光照射電子線ホログラフィー観察に必要な消耗品の購入に使用する予定である.
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