2018 Fiscal Year Research-status Report
炭化珪素デバイスの高速スイッチング特性に注目したMHz級高周波電力変換器
Project/Area Number |
18K13802
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 貴史 京都大学, 工学研究科, 助教 (00783036)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電力変換回路 / 高周波動作 / SiCデバイス / デバイスモデル / 駆動回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では炭化珪素(SiC)パワーデバイスの高速スイッチング特性に注目し,駆動周波数10 MHzをこえる高周波電力変換回路の実現をめざす.SiCデバイスはSiを置きかえる形で実用化がすすんでいる.本研究ではさらにその先を見据え,Siでは成しえない高周波電力変換回路の提案をめざす. SiCは高い絶縁破壊電界を有しており,Siデバイスの物理限界をこえる高耐圧,低オン抵抗のデバイスが実現できる.スイッチング素子としてはSiC電界効果トランジスタ(MOSFET)が研究開発されてきた.SiO2/SiCの界面品質が十分でないため,オン抵抗が高くなりやすく,またしきい値が不安定であるという問題をかかえているものの,デバイス構造の最適化によりSiデバイスより優れた特性が報告されつつある. しかし,これらのSiCデバイスは優れた性能が報告されているものの,現状ではSiデバイスの置き換えにとどまっており,その優れたデバイス性能を十分にいかしきれてはいない.本研究ではSiCデバイスの性能をひきだすためのデバイスモデル開発をおこない,10 MHzをこえる高周波動作に対応した回路シミュレーション環境を構築する.そして,これをもとに高周波電力変換回路を製作する.半導体分野と回路応用分野を横断し,SiCデバイスの高速スイッチング特性に注目した新しい高周波電力変換回路の実現をめざす.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では10 MHzに対応した回路シミュレーション環境を構築した.デバイスモデルに改良を加え,10 MHzの高周波スイッチングを精度よく再現できるようにした.特にミラー期間中ではチャネル領域の非理想的な特性の影響を受けやすく,注意深くモデリングを行う必要があることがわかった.また,受動部品にも注目し,MHzクラスでの振る舞いについて詳しく解析した.たとえばインダクタの高周波駆動時におけるB-H特性を測定するシステムを立ち上げた.また,超小型の磁気プローブを自作し,高周波駆動時の空間的な磁気分布を明らかにした.これらの知見を総合し,10 MHzという極めて高い周波数領域でも電力変換回路のシミュレーションを実現することができた.これをもとにすでに1 kWの昇圧回路を試作し,1 MHzの高周波動作領域で変換効率95%を実現した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した回路シミュレーション環境を用いて10 MHz級の電力変換回路を設計する.特に寄生インダクタンスを適切に低減する必要があり,回路パターンを再設計することが重要である.また,10 MHzの駆動周波数では制御に用いるFPGAの動作周波数に近づいてくる.そのため,パルス幅変調(PWM)ではなく,パルス密度変調(PDM)による制御をおこなう.以上から,10 MHzにおける高周波電力変換回路の実現をめざす.
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Causes of Carryover |
年度末に消耗品(電力変換回路の制御系統)を購入予定であったが、一部年度内に納品できないことが分かり、残額45,008円が発生している。次年度に使用する。
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